「父と暮らせば」

 「父と暮らせば」(監督:黒木和雄 主演:宮沢りえ・原田芳雄)を岩波ホールで山ノ神と一緒に見てきました。原爆により殺された死者への想いから幸せになることを逡巡する娘、原爆被害の実態を後世に残すことに尽力するとともに彼女に思慕する若き学者、そして彼女が幸せに生きることを願い幽霊として現れる父。井上ひさし原作によるこの三者の舞台劇を、黒木監督が見事に映画化しています。光(喜び)と影(苦悩)が交錯する様を演じ切った宮沢りえ、娘を想う父を時には飄々と、時にはシリアスに表現した原田芳雄、感服しました。特に宮沢りえは、「たそがれ清兵衛」以後、女優として一皮むけたようですね。良い作品に出会えるのも実力のうちでしょう。内面からにじみでるような美しさで、輝いています。そうそう広島弁による親子のやりとりも秀逸でした。「仁義なき戦い」のイメージで乱暴な言葉だと思い込んでいたのですが、温もりのある素敵なものでした。彼女の最後のセリフ「おとったん、ありがとありました」が今も心に響いています。なお4月8日(金)まで上映しております。
 後は、われわれがこの作品から何を受け取るかが問題ですね。現在まで繰り返される一般民衆の無差別殺戮、そして原爆投下以後も生み出され続ける「ヒバクシャ」。第五福竜丸事件、核実験により被曝した南太平洋の人々やアメリカ兵、チェルノブイリ事故、核兵器を生産し続けたハンフォード工場による放射能汚染、東海村の原発事故、劣化ウラン弾… たぶん映画に登場した若い学者は、あの地獄を記録することが、地獄の再来を防止することにつながると考えていたのでしょう。しかし地獄は終わっていない。アウシュビッツという別の地獄から生還し、その実態を証言し続けたプリーモ・レーヴィは、1987年に自殺してしまいます。証言を受け止めてもらえず、地獄の再来を食い止められなかった絶望からなのでしょうか。
 そしてイラク戦争で劣化ウラン弾を使用し、一般民衆を殺戮したアメリカ軍を、われわれが選出した政府が支持していることも忘れないようにしましょう。
 夕食は、近くの「揚子江菜館」で上海式肉焼きそばを食べるか、「スヰートポーヅ」の餃子にするか、迷った結果意表をついて「ろしあ亭」でロシア料理を堪能。ところでロシアの人は紅茶にジャムを入れないと山ノ神が言っておりましたが、本当なのかな。
by sabasaba13 | 2005-04-03 08:17 | 映画 | Comments(2)
Commented by magic-days at 2006-09-12 08:30
先日テレビで放映された折やっと見ました。
「自分だけ幸せに成って良いのか?」
心打たれました。
それと戦後の慎ましやかな食生活が私には
懐かしく嫌な思い出でなかったのは子供だったからでしょうか?
何時もきらきら輝いていました。
両親が支えてくれていたのですねぇ〜
宮沢りえさん、綺麗で良い役者さんに成られましたね。
Commented by sabasaba13 at 2006-09-12 23:14
こんばんは。宮沢りえの清楚な美しさには見惚れてしまいました。三井のリハウス娘が見事に一皮二皮三皮向けたと思います。なお、同じ題材を扱いながら、違う結末を描いた漫画「夕凪の街 桜の国」(こうの史代 双葉社)も面白かったです。これはお薦めです。
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