「もやしもん」

 「もやしもん」(石川雅之 講談社)読了。一言でいえば菌類や発酵・醸造に関する蘊蓄マンガなのですが、面白く読むことができました。作者曰く「山なし・オチなし・意味なし」ですが、どうしてどうして、その魅力は、登場人物たちの何ともいえないゆるゆる感でしょうか。某農業大学を舞台に、競争・努力・勝利とは無縁に、他者を蹴落とそうとする気配もなく、それぞれが「菌」を中心に好き勝手なことをしながらも、適当に協力していく。私はそこに惚れましたね。菌が肉眼で見える体質の沢木惣右衛門直保(実家は種麹屋、種麹のことを"もやし"と言うそうです)、彼の幼馴染で造り酒屋の息子の結城蛍、菌に関する該博な知識で紙面を埋め尽くす某農大教授の樹慶蔵(この人に表情はあるのか)、高飛車な大学院生の長谷川遥、樹研究室唯一のゼミ生の武藤葵、農大一年生で除菌女の及川葉月(この三人を見分けられれば、もうあなたは「もやしもん」フリーク)、農大二年生の凸凹コンビ美里薫と川浜拓馬、といった連中がのんべんだらりと暴れまくります。もう一つの魅力は、マンガとして描かれた菌たちの愛くるしさ。沢木の欠かせないパートナー、アスペルギルス・オリゼー(澱粉の糖化力に優れる、人呼んで「日本の国菌」)をはじめとして、見たことも聞いたこともないような菌が大活躍します。
 また、菌類とうまく付き合うことが大事という主張が、一本作品を貫いているのも大いに共感できますね。除菌・抗菌グッズに群がる方々にぜひ読んでほしいマンガです。長谷川遥の科白です。
 (長谷川)「除菌よりうまく菌と付き合って体を健康で丈夫にする事を考えた方が早くない?」
 (沢木)「じゃあこの除菌ブームって何ですか…」
 (長谷川)「私が思うにマイナスイオンって書けば家電品が売れるのと同じじゃない?」
 山田君、座布団二枚!
by sabasaba13 | 2010-04-01 06:34 | | Comments(0)
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