そして12:03に小牛田(こごた)に到着、ここで12:13発の石巻線気仙沼行きに乗り換えます。すこし時間があるので一服しようと人気のないホームを見渡すと…はるかはるか遠くの端に孤独に打ち震えるように灰皿が佇んでいました。やれやれ、ここまで邪慳にされるか。いたしかたないという気持ちと、ここまでやることないじゃないという思いに揺れる五十…歳の男心でした。
そして列車に乗り込みはさかけや牧草をまいた白いロールを眺めていると、ふとどす黒い不安に襲われました。ほとんどが無人駅だ… 予定では柳津(やないづ)で降りて駅前にあるだろう電話で(筆者注:私は携帯電話を持っていません)ハイヤーを呼んで登米に向かうつもりです。(バスは一日に数本のみ) しかし通り過ぎる無人駅の様子を見ていると、駅前に電話の「で」の字も、商店の「し」の字もない閑散とした駅がほとんどです。時々、駅員がいる駅がありましたが、そこでならハイヤーの呼び出しは可能でしょう。アナウンスに耳を傾けると、無人駅の場合は「列車の一番前のドアだけが開きますので…」、有人駅の場合は「お近くのドアボタンを押してお降りください」というものです。雄渾に流れる北上川を渡り、そろそろ柳津駅が近づいてきました。
アナウンスの冒頭が「れ」か「お」か、固唾を呑んでいると…「れ」。万事休す、Checkmate。やれやれ、と溜息をついている場合ではありません。土留め色の脳細胞を起動させなければ、まずは駅前に何もないという最悪のケースを想定しましょう。①もしあればの話ですが、近くの民家に飛び込み懇願して電話を借りる。②とにかく歩き廻って公衆電話か商店を捜す。③あきらめて一時間ほど駅でぼーっとして次の列車で気仙沼へと撤収する。こんなことだった前もって調べておくのだったと天を仰いでもafter the carnivalです。ん? 今、車窓からタクシー会社の看板が見えたぞ。やったあ! そして12:52、柳津駅で降りると、ぬぅうわんと女性の係員が駅舎にいらっしゃいます。私服なので、JR職員ではなく地元ボランティアの方なのでしょうか、詳細は不明です。さっそくハイヤー呼び出しをお願いすると、快く駅の電話で連絡をつけてくれました。おまけにコインロッカーがないので荷物まで預かってくれるという御厚情。嗚呼、神に愛されし者よ(筆者注:私のことです)! 駅前のトイレを拝借すると
男女表示がご丁寧に二つとも破壊されています。もとのロゴを忠実に復元しようとする手書きの文字にはちょっと感銘を受けました。そしてやってきてくれたタクシーに乗り込み、左手に悠々と流れる北上川を眺めながら十分ほど走ると、登米の観光案内所「遠山之里」に到着です。
本日の一枚、柳津駅からの眺めです。