時刻は午前十時、そろそろ出発しますか。ガイドマップによると、ここから上多和(うわだわ)茶屋跡までしばらく上りがつづきます。集落の中を抜ける急坂の小道は旧旅籠通り、かつての屋号を小さな看板で紹介してありました。江戸時代、庶民が伊勢参りのあと、熊野を含む西国巡礼をした時に利用した旅籠なのでしょう。往時の殷賑は想像するしかありません。
集落のはずれには「古道散策のみなさまへ ここより近露王子までは民家がなく、連絡の方法がありません。所要時間は約四時間ですので、出発にはお気をつけ下さい。中辺路町」という看板がありました。うん、これは褌を締めてかからねば。何軒かの廃屋を横目に、石畳の道を少し歩くと、やがて山道へと変わります。一里塚跡には東屋風の休憩所がありますが、トイレ・飲料水はありません。
先を急ぎましょう。登り坂をのぼっていくと、右手に高原池が見えてきました。まるで坂東玉三郎が湖面からぬっと出てきそうな幽遠は雰囲気の小さな池で、鏡のような水面が、周囲の木々を美しく怪しく映していました。
そして大門王子跡に到着、ドアがついた小さな祠があったので開けてみると、記念のスタンプでした。
このあたりから、左手に視界が開け、山なみを眺望することができます。少し歩くと休憩所がありました。時刻は午前11時6分、出発から三時間半が経過、すこし早いけれども小腹もへったし昼食をとることにしましょう。山小屋風木組みの休憩所に座り、昨晩寿司屋で買った
ひとはめ寿司をいただきました。磯の香りをただよわせるひとはめとしめ鯖がマッチしてなかなかの美味、これはお薦めです。なおこちらにはトイレ・飲料水・非常用電話が用意してありました。
それでは出発、ここから数分歩いた十丈王子跡には、木製のベンチと、もっときれいな新設のトイレがあったことをつけくわえておきましょう。
本日の五枚です。