ごととんごととんと路面電車に揺られながら、十分ほどで「市役所前」に到着。ここで下車すると、眼前に豊橋市
公会堂の巨躯が迫ります。堂々とした恰幅のよいファサード、いいですねえ。思い切り幅を広くとった正面階段が、列柱へと続きます。その両サイドにあるドームと四羽の鷲をいただいた塔がいいアクセントになっています。角ばった重厚な建築で、下手すると鈍重な印象を与えかねないのですが、この塔やアーチ型をまじえてリズミカルに並ぶ縦長の窓が、軽やかさと華やかさを演出していました。解説板によると、設計は中村與資平、豊橋市制25周年を記念して1931(昭和6)年に建てられたそうです。さまざまな催し物に使われながら、この豊橋の町をずっと見守ってきたのですね。町の記憶とも言うべき貴重な物件、町のホット・ステーションなんぞいらないから、町のメモリアル・ステーションとしていつまでも保存していただきたいと切に願います。
公会堂の右手の道をすこし歩くと正面は豊橋公園、戦前の物件らしきものものしい警備員の詰所が、まるでウェディング・ケーキにへばりついた蜘蛛のように印象的です。軍関係の施設の跡地なのでしょうか。
公園に沿ってすこし歩くと、豊橋聖ハリストス正
教会が見えてきました。竣工は1913(大正2)年、設計は
函館や
白河の正教会も手掛けた、その筋では有名な河村伊蔵です。愛らしい八角形の鐘楼と小さなドーム、一列に並びじょじょに大きくなるポーチ・玄関・啓蒙所・聖所のバランス良い配置もいいですね。また手入れや保存状態も良く、みんなに愛されている建築であることがしのばれます。なお内部には
山下りんが描いたイコンがあるとのことです。
それでは今夜の塒がある駅方面へと戻りましょう。歩道橋でまた「こっちだヨウ平」を発見。「東海道」という道標もありました。
吉田宿本陣跡の碑を通り過ぎると、「篠嶋屋」という蕎麦屋を発見。小腹もへったし、ここで夕食をとることにしましょう。中に入り、
ご当地名物に敬意を表して味噌煮込みうどんを所望。そのくどさと暑苦しさには少々閉口しましたが、一気にたいらげました。御馳走様。
アーケード商店街にスマートボール店があったのには驚愕。温泉場では時々見かけますが、ヒューマン・スケールの、こうしたしょぼくて温もりのある娯楽が、街のど真ん中で健気に商っているその姿には感銘すら覚えます。客人が一人しかいないのがちょっと気にかかりますが、末代まで町のプレイ・ステーションとして鎮座していただきたく思います。そして豊橋駅に戻り、予約しておいた近くのビジネス・ホテルに投宿。
本日の二枚です。