現地ガイドさんは身長2mはあるかと思われる大柄で屈強な男性、彼の案内でスプリット観光のはじまりはじまり。バスからおりてふと気づくと、眼前のビルに弾痕らしき傷がありました。内戦はここでも行なわれたのでしょうか。椰子の並木がある海岸通りをすこし歩くと、なんとも摩訶不思議な建物が見えてきました。
新旧とりまぜたいろいろなスタイルの建築が入り組み絡み合い渾然一体となっており、洗濯物が干してあるので明らかに現在も住居として利用されているようです。これがディオクレティアヌス帝の宮殿ですね。その前にあった復元想像図を指し示しながら、ガイドさんからの説明がありました。
かつては船を横づけできたという南門(銅の門)をくぐると、いきなり広大な地下ホールが現れます。宮殿の南半分は彼の私邸で、それを支えていた地下室だそうです。かつては住人が捨てたゴミで埋め尽くされていたとのこと。その見事な石組みや列柱には圧倒されてしまいます。
そして露店が櫛比する地下通路を抜け地上にでると、そこはまるで迷宮。ローマ時代の遺構や中世の建物、近現代の建造物がまるでパズルのようにからみあっています。ここでカン蹴りをしてみたいと思うのは、私だけでしょうか。すこし歩いただけで方向感覚は失われ、奇妙な浮遊感さえ覚えます。
天井がなく青空が見える円形の広間は前庭、私邸の玄関にあたるところです。すると四人の男性がどこからともなく現れ、ア・カペラによる素晴らしいコーラスを歌いはじめました。おおっこれが噂のクラパ、ダルマチア地方に伝わる伝統音楽です。観光客向けのパフォーマンスなのでしょうか、粋な計らいですね。一糸乱れぬアンサンブルと優れた音響効果をしばし堪能。演奏が終わって拍手が響き渡ると、彼らが取り出したのはCDでした。ようがす、人生意気に感ず、功名誰かまた論ぜん、音楽家のはしくれとしてストリート・ミュージシャンを援助しましょう。さっそく一枚購入、転んでもただでは起きない山ノ神は一緒に写真を撮らせてもらいました。
この広間を抜けると、東西南北いずれの門からも直進して達するペリスティルという中央広場です。いやはやたいへんな混雑だ、まるでローマのスペイン階段のようです。古代ローマ帝国の兵士の扮装をしたお二方は、観光客向けのサービスでしょう。
この広場に面してあるのが大聖堂、隣にある鐘楼からの眺望が素晴らしいとガイドブックにありました。嗚呼、ぜひとも自由時間が欲しい! 狭い路地を縫うように歩いて西門(鉄の門)をくぐると、ルネサンス様式の邸宅が建ち並ぶナロドニィ広場に出ました。ナロドニィ…フ・ナロードニキというロシア語から類推するに、おそらく「人民広場」という意味でしょう。飲み物を積んだ小さなカートに相乗りした働くおじさんが、ぱたぱたと旧市街へと入っていきました。
本日の三枚です。