隠岐編(34):智頭(10.9)

 待っていていただいたタクシーに乗り込み、メインストリートの智頭往来で下ろしてもらい、さあ智頭宿の徘徊を開始です。県内で最大の宿場町として栄え、往時を偲ばせる町並みが残っているとのこと。また登録有形文化財を探すときに重宝する「文化遺産オンライン」というサイトで知ったのですが、智頭消防団本町分団屯所、下町公民館、中町公民館、旧塩屋出店洋館といったしぶい物件を見るのも楽しみ。まずは造り酒屋の諏訪酒造へ、かの名作「夏子の酒」に登場した酒屋さんですね。
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 付近には古い洋館や海鼠壁の土蔵もあり、真っ直ぐに伸びる道の彼方には山なみが見通せるなど、なかなか魅力的な景観です。そして下町公民館がありました。竣工は1914(大正3)年、かつては智頭町役場として使用された、地方における洋風庁舎建築の一事例だそうです。玄関ポーチの三角屋根がコケティッシュ。
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 路地に入り足の向くまま気の向くまま散策を楽しんでいると、格子窓が印象的な古い商家、塩谷出店がありました。どうやら休憩所として公開されているようで、内部を見学することができます。中庭に面してしつらえてある一面の硝子戸が見事です。庭の一角には白く塗られた下見板張り、和風テイストをからめた瀟洒な洋館がありました。かつては教会だったそうですが、現在では西河克己映画記念館として公開されています。
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 塩谷出店の近くには、豪壮な商家建築の米原家住宅がありますが、残念ながら非公開。そして1922(大正11)年ごろ竣工の中町公民館へ、下見板張り+寄棟造・桟瓦葺での和洋折衷建築です。何でも当初は個人病院として建てられましたが、その後幼稚園、そして現在は公民館として余生を送っているそうです。
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 ふたたび智頭往来に戻ると、おおっ、周囲を睥睨するかのように屹立する智頭消防団本町分団屯所がありました。竣工は1941(昭和16)年、正面の大きな切妻破風、その上部にちょこんと鎮座する切妻屋根の火の見櫓、破風を貫通して櫓へとつながる梯子段、いいですねえ、素晴らしいランドマークです。こうした味な物件を大切に保存されている智頭のみなさんに敬意を表します。
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 その前にあるのが石谷家住宅、鳥取城下で塩の卸問屋を稼業とし、その後智頭の大庄屋に命じられ、問屋業や山林業を営み智頭宿の発展に寄与した旧家です。この邸宅は、近世から近代への建築技術の推移を示す貴重な歴史的建造物だそうです。よろしい見物させてもらいましょう。土間の豪快な梁組を見ただけでも、金に糸目をつけず当時の建築技術の粋を集めて建てたことがわかります。
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 牛臥山を借景にした池泉式庭園も見事なものでした。洋風螺旋階段とその吹き抜け部にかかる太鼓橋は意表をついた空間構成ですね。
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 そして何といっても、室内調度を飾る意匠の素晴らしさ! 鳳凰や唐草文様、そして石谷家住宅や諏訪神社など智頭の町並みを精緻に彫り上げた透かし彫りの欄間には、おじさん、まいりました。また障子の意匠も、扇やハート型など遊び心にあふれたもので、その桟の精巧なつくりにも瞠目します。施主の美意識と財力、職人の技が一体となった完璧なコラボレーション。昨今の資産家も、ガレの花瓶やマイセンの皿に泡銭を注ぎ込むより、こういう匠たちに金を払っていいものをつくらせれば、日本文化の維持発展に多少なりとも寄与できるのにね。おっ予報どおり、小雨が降ってきました。二階から眺める、雨に濡れた甍の波もまたおつなものです。
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 本日の八枚です。
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by sabasaba13 | 2012-01-17 06:24 | 山陰 | Comments(0)
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