札幌・定山渓編(5):北海道大学(10.10)

 その近くにあるのがクラーク像、台座には名文句"Boys be ambitious"が刻んでありました。そして本キャンパス最古の物件、1901(明治34)年竣工の旧昆虫学及養蚕学教室があります。なんと設計は中條精一郎、宮本百合子の御父君でした。なお彼の御父君・中條政恒については郡山に関する記事でふれたのでご参照を。
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 地図によるとこの付近に旧図書館があるはずですが…あったあった、切妻屋根の瀟洒な洋館です、図書館ハンターの方、お見逃しなく。堂々たる外観の旧理学部本館は、現在、総合博物館として利用されているようです。
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 そして定番中の定番、ポプラ並木に到着。「北大再発見 CAMPUS TOUR」によりますと、ポプラ(正式にはセイヨウハコヤナギ)が北海道にやって来たのは明治の中頃,アメリカから防風林用に種子が輸入されたのが最初とされています。北大ポプラ並木の嚆矢は1912(大正元)年,当時の林学科の実習生によって45本が植栽されてからですが、ポプラの寿命は60年から70年なのでもう老木だそうです。おまけに2004(平成16)年に襲来した台風のため51本のうち19本が倒れてしまいました。現在は、このポプラの枝から育てた若木が植えられ、その成長を待っているところです。その脇には札幌農学部二期生である新渡戸稲造の胸像があり、台座にはこれも名文句、"I wish to be a bridge across the Pacific"と刻んでありました。
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 中央道路を進むと、「人口雪誕生の地」という記念碑を発見。たしか寺田寅彦の門下生、中谷宇吉郎の業績ですね。理化学研究所で研究に悩んでいた中谷宇吉郎が、寺田寅彦のアドバイスにより雪の結晶についての研究をはじめたというエピソードを聞いたことがあります。1936(昭和11)年3月12日にここ北海道大学の低温実験室で、人工雪の製作に世界で初めて成功したそうです。台座には「雪は天から送られた手紙である」という彼の名文句が…刻んでありません。その近くにある見事なイチョウ並木がそろそろ色づきはじめていました。
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 さてさてここまでジテ公をこいできて何か得も言われぬ強烈な欠落感を感じていたのですが、その理由がわかりました。朝の寒風にうちふるえながら孤塁を守る一枚の立て看板。そう、かつてキャンパスを埋め尽くしていた立て看板がこれ一枚しかありませんでした。68/69世代の残り香を多少は知っている私としては、ちょっと異様な光景です。飛行機の中で出会った幼い若者たちのこともふと脳裡をよぎり、若者が政治や社会への関心を相当に失っているのだなと実感しました。知人の話によると、最近の大学では学生を集めるために就職率を上げることが至上課題となっており、入学早々企業の正社員として採用されるためのさまざまなトレーニングを施しスキルを身につけさせる"教育"に力を入れているそうです。もちろん学生たちもこうした路線に乗らざるを得ないし、早い時期から就職活動に取り組まなければならない。企業が必要とする能力を骨身を削って身に付け、激烈な就職競争に勝ち残るための四年間、これでは政治や社会、そして世界への生き生きとした関心を持つことなど無理ですね。あの幼さも、こうした"戦士"としての緊張から束の間解放された時に見せる素顔だったのかもしれません。"戦士"と"子供"、今、若者たちの人格は二つに引き裂かれているような暗澹たる思いにとらわれます。そして次々と採用試験に落とされ、人間としての自信を打ち砕かれていく。イギリスの元国会議員トニー・ベンの「政府が国民を服従させるときには、教育と健康と自信を打ち砕く」という言を思い出します。国際競争に勝ち残る経済的活力を得るため、失業と貧困と飢餓の恐怖で怯えさせて労働者を勤酷使しようとする新自由主義的政策を利用して、官僚・財界・政治家が一体となって「従順な国民」づくりを進めている、と見るのは穿ち過ぎでしょうか。もちろん、これは若者だけの問題ではありません。そのうち、すべての学校や企業、あちこちの街角に、ブーヘンヴァルト強制収容所の焼却場に続く細道にあったという標語が掲げられるかもしれませんね。
 自由への唯一の道。その道しるべは、服従、組織的労働、正直、秩序、規律、清潔、禁酒、自己犠牲を厭わない心、祖国日本への愛である。

 本日の三枚です。
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by sabasaba13 | 2012-01-29 08:14 | 北海道 | Comments(0)
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