青森錦秋編(12):奥入瀬(10.10)

 車道から階段をおりると、奥入瀬川に沿う遊歩道の入口。水門を過ぎると、もうすぐに水と緑の交響楽に身も心も包まれます。
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 まだ早いのか、今年は外れなのか、見事な紅葉には程遠いのですが、この素晴らしい渓流の散策を楽しめるだけで満足です。時には滑らかに、時には苔生した岩にくだけ、時には瀑布となって歓喜の歌を歌う清冽な水の流れ、その千変万化の表情には魅了されずにはいません。それにともなって変化する妙なる水音も素晴らしい。そしてその清流をやさしく包み込み緑のグラデーション。深呼吸をすれば水と緑の微かだが鮮烈な香りが鼻腔をくすぐります。川に横たわる倒木には苔や若い木々が生え、己の生を全うした後も命を育んでいました。互いを支える/に支えられる命の連鎖には、荘厳さすらただよいます。そしてそこから弾き出されているような強烈な異物感を、自らの存在に感じました。その精妙なる生命の連鎖を破壊しているのがわれわれ現代の人間ではないでしょうか。ある時から人間は、自然界の癌細胞になってしまったようです。いつから? たぶん「成長パラノイア」にとりつかれた近代という時代からなのでしょう。前の時代よりもより豊かになり続けなければならないという強迫観念のとりつかれた時代。自然の中で異物感にとらわれることなく、包み込まれるような一体感をふたたび感じることができる時はまた来るのでしょうか。
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 幾段もの巌を分かれて流れ落ちる五両の滝を過ぎると、魚止めの滝(銚子大滝)に到着。奥入瀬川本流にかかる唯一の滝で、高さ7m、幅20mの勇壮な景色の滝です。ほぼ垂直に切り立っているので魚類が上れず、そのため十和田湖にはかつて魚が住んでいなかったと言われます。また十和田湖を銚子(とっくり)に見立てると、このあたりがその注ぎ口にあたるというところから、別名銚子大滝。
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 そしてほぼ垂直に切り立った岩盤を流れ落ちる九段の滝を見て、玉簾の滝を過ぎるとやっとトイレがありました。子ノ口からここまで時間にして約一時間、この間まったくトイレはありませんのでご注意を。なお銚子大滝のあたりから、バスで乗り付けてきたのでしょうか、けっこうな人出となりました。ま、この時期の奥入瀬ですからいたしかたないですね。
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 いたたまれないのは人混みよりも、あのおぞましく忌まわしい資源浪費と環境破壊と人権侵害の権化・自動車の存在です。なにせ渓流および遊歩道の直近に並行して車道が通っているので、その醜悪な音や匂いや姿に悩まされることが、時々あります。たかだか人間一人~五人を異動させるのに、なぜあんな大仰で重たい機械(ちなみにトヨタ・プリウスGの重量は1350kg)が必要なのか、理解に苦しみますね、わたしゃ。せめてマイ・カーを規制していただきたいと強く強く要望します。ついでに言わせていただければ、エコ・カー減税もやめていただきたい。上記のような無駄な乗り物である以上、"エコ"ではありえないのだから、車に乗らない人への減税および私用・趣味で乗る人への加税をしていただきたく思います。世の中に絶えて車のなかりせば秋の心はのどけからまし… いかんいかん、あやつのことを考えるとつい感情的になってしまふ。自戒自戒。
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 本日の四枚です。
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by sabasaba13 | 2012-02-24 06:22 | 東北 | Comments(0)
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