グリンデルワルト編(21):インターラーケン(10.12)

 そしてロープウェーを乗り継いでミューレンへと降りました。駅構内には1969年に加藤滝男氏を団長とする日本の登山隊がアイガー北壁直登ルートを初登攀したときに使った道具が展示してありました。 "Michiko Imai"と書かれたヘルメットもありましたが、これは女性としてはじめて世界三大北壁(アイガー、マッターホルン、グランド・ジョラス)の登攀に成功した今井通子氏のものですね。
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 この頃になると再び青空が戻ってきました。静かなミューレンの町中を、眺望を楽しみながら駅へと歩いていきました。そして列車とロープウェーを乗り継いでラウターブルンネンに着いたのが午後三時半ごろ。まだ明るいし、インターラーケンを散策することにしました。列車に三十分ほど乗るとインターラーケン・オスト(東)駅に到着です。ここからアーレ川沿いの遊歩道を歩いて、旧市街や繁華街のあるインターラーケン・ヴェスト(西)駅に向かうことにしました。駅前から、冠雪をいただいた勇壮なアルプスの山々がよく見えます。駐輪場にはたくさんの自転車が置かれていましが、環境に配慮する方々も多いようです。
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 この寒さの中、白い息を吐きながら駅前を走り抜けていく自転車を何台も見かけました。個人的に、人類が生み出した最高の発明品こそが自転車だと思っております。仕組みもシンプルで安価だし、有害物質も出さずに、人間の能力を何倍にも高めてくれる優れものですね。(最悪の発明品は核兵器と核[原子力]発電) もっと利用したいのですが、いかんせん、日本では駅の近くに駐輪所が少ないためたいへん不便を感じております。私の住んでいるところの最寄り駅では、違法駐輪を取り締まる方々(ご老人を安い賃金で雇用している?)が眼を光らせており、まるで自転車に乗るのは犯罪行為なのではないかと錯覚しそうな雰囲気です。土地がないのはわかりますが、行政は万難を排して駐輪スペースをつくってほしいものです。他にも、自転車専用レーンや、乗り捨てができる貸し自転車ステーションや、自転車を乗せられる客車など、知恵をしぼればもっともっと便利に自転車を利用できるようになると思うのですが。
 ま、それはともかく、橋を渡り、アーレ川に沿った遊歩道をのんびりと歩いていきました。鏡のような川面に映るアルプスの山並みや木立や家々の美しさに見惚れていると、水鳥がすーっと泳いでその映像を航跡でゆるがしていきます。長年連れ添った伴侶と並び、すれちがう老夫婦や若者と挨拶をかわし、清冽な空気と素敵な眺望を楽しみながらのお散歩。過分な贅沢はいらない、明日も今日と同じような平々凡々とした一日を、たぶん送れるだろうという日常性の尊さ。「日常性とはつまらないもののように見えて、じつは、人間の世界を立ち上げているものなのだ。これを剥ぎとられたとき、人間性は喪失し、世界は崩壊する。二十世紀の暴力がしでかしたのはそのことだった。それはアウシュビッツと広島において頂点に達した」という多木浩二氏の言葉を思い起こしました。
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 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2012-06-08 06:19 | 海外 | Comments(0)
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