朝六時に目覚め、朝風呂に入り、宿の便所を拝借すると大正浪漫風の
男女表示でした。
朝食をいただきながら宿にあったパンフレットを読んでいると、"寸又峡温泉では、「芸者やコンパニオンは置かない」「ネオンサインはつけない」「山への立て看板は設置しない」の三原則を堅持しながら「日本一清楚な温泉保養地」を目指しています"と記されています。その意気や良し。奥泉駅へと向かうバスの時刻までまだすこし間があるので、朝の散歩と洒落こみました。まずは「翠紅苑」の正面玄関を撮影。
第二駐車場まで歩いていき(紅葉の時期にはここまで満車になるような)、その先にあるグリーンシャワーロードを歩いて、昨日も訪れた猿並(さんなみ)橋へ行ってみました。朝日を燦々と浴び、まるで明日に架かっているかのような吊り橋の凛とした風情を堪能。
そして宿に戻り、身支度を整え、支払いをしてバス停へ。乗り込んだバスは、羊腸の如き山道を疾駆して奥泉駅へと向かいます。途中で、道は一車線ほどの狭さとなり、対向車とすれ違うのも一苦労です。紅葉の時期にはどうなってしまうのでしょうね。
何気なく昨日買った大井川全線フリーきっぷの裏面を見ると…おうまいがっ、このバスも無料で乗れるものでした。嗚呼、昨日は金を払っちまった。後悔先に立たず、フリー切符を買ったら有効区間をきちっと確認しないとだめですね。山ノ神でしたら、眼光紙背に徹す、絶対に見逃さなかったでしょう。そして三十分ほどで、南アルプスあぷとライン(大井川鉄道井川線)奥泉駅前に到着です。なお、千頭-奥泉間は、落石の危険があるため、バスによる代行運転が行なわれています。ああ残念、「線路を楽しむ鉄道学」(今尾恵介 講談社現代新書1995)によると、土本駅と川根小山駅の間では、日本で有数の嵌入(かんにゅう)蛇行が見られるそうです。氏曰く、「これほど山の中なのに」と呆れるほど急カーブの蛇行ですね。一日も早い復旧を期待しましょう。さて、バス停の近くには、この近くで発掘された縄文時代の下開土(したのかいと)遺跡についての説明板がありました。なるほど、だから公衆便所が竪穴住居を模してあるのか。もうすこし写真が集まったら、写真館「ご当地トイレ」の一枚として紹介します。駅前広場には縄文人家族の像、そしてガラスケースの中には出土品が展示されていました。
階段を下りると、奥泉駅の小さな駅舎がありました。待合室で資料をいただいていると、「山蛭注意」という掲示物がありました。
蛭かあ… ゴキブリも蚯蚓も蛞蝓もガガンボも♪どおんとどんとどんと波乗り越えて♪なのですが、彼/彼女はちょっとどうも… いや吸着されたことはないのですが、和泉強化じゃない泉鏡花の『高野聖』を読んで以来、"ひ"と聞いただけでも総毛立つようになりました。お会いしないことを心の底から祈りましょう。ホームに行くと、溢れるほどではありませんが、相当数の観光客が列車を待っていました。
本日の三枚です。