九州編(4):大分へ(11.9)

 さてそろそろ列車が到着する時間です。ホームに行くと、「日本一長い鱧の椅子」がありました。なんでも中津名物のハモ料理にちなんだもので、長さ10mだそうです。そして入線してきたソニック17号に乗り込み、これで大分へは辿りつけると一安心。トイレに行くと、途中で「対応が後手後手だ」「責任者を出せ」と売り子さんにからんでいる中年男性を見かけました。立場が弱い人に対して居丈高になるのは、品性に欠ける行為だなあ。こうした場面をよく見かけるようになったような気がしますが、みなさん、ストレスが溜まりに溜まっているのかなあ。橋下近衛歩兵第三連隊長や石原強制収容所長は、そうしたストレスや憎悪を感情的にぶつける対象(ex.公務員、教員、中国…)を設定して攻撃し、拍手喝采を浴びているのでしょう。いわゆるポピュリズム的手法ですが、これが過熱し暴走すると、その社会にとって如何に危険なことかは歴史が証明するところです。ヴァイツゼッカーも「ヒトラーはいつも、偏見と敵意と憎悪とを掻きたてつづけることに腐心しておりました。若い人たちにお願いしたい。他の人びとに対する敵意や憎悪に駆り立てられることのないようにしていただきたい。(p.29)」(「言葉の力」(永井清彦編訳 岩波現代文庫)とおっしゃっております。私たちに苛酷なストレスを与えている存在やシステムを正確に捉えて批判し、冷静に理知的に対処していこうとする政治家の登場を期待したいのですが、そのためにはまず私たちの知的レベルを上げることが大前提でしょうね。
 用をたして席に戻ろうとすると、男性はおらず、売り子さんが心なしかしょげた様子で佇んでいます。せめて売り上げに協力しようと駅弁を購入、しばし悪天候について歓談しました。そして立去ろうとすると、彼女が「これをどうぞ」と紙片をくれました。すわ、携帯電話の番号かメール・アドレスか、お嬢さん、こんなやくざなおいぼれ旅烏、悪いこたあ言わねえ、もっと堅気な若い衆を…よく見ると珈琲が100円になる割引券でした。一宿一飯の恩義(違うか)、有難く頂戴しましょう。さて購入した弁当はと言うと、東筑軒の「かしわめし」、鳥肉と卵がトッピングされた炊き込みご飯がおいしゅうございました。何やら謂れがありそうだなと、インターネットで調べてみると、同社のホームページに以下の一文がありました。
 大正初期、国鉄の門司運転事務所所長をしていた本庄巌水(いわみ)は、各地を旅した時に、駅弁が画一化していることを痛感。郷土色を生かした駅弁づくりのために、大正10年に折尾駅(北九州)で筑紫軒という弁当屋をはじめた。福岡は、鶏の水炊きが名物になっているように、昔から鶏肉を好んで食べる土地柄。そこで鶏のスープの炊き込みご飯に鶏肉と卵をあしらった「親子めし」を考案した。ところがこの「親子めし」、声に出してみると「おやころし(親殺し)」に聞こえてしまう。そのため、名前を『かしわめし』に変更した。
 筑紫軒は、戦時中の昭和17年に、国策により、折尾の眞養亭、吉田弁当、直方の東洋軒と企業統合、これが現在の『東筑軒』となる。名物は『かしわめし』。「鶏肉以上にご飯が旨い」と定評がある炊き込みご飯の味付けは、巌水の妻スヨが考え、以来秘伝として代々受け継がれ、絶妙の味のスープを作り出している。
 なるほど、駅弁に歴史あり。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2013-01-27 05:55 | 九州 | Comments(0)
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