九州編(55):玄海原子力発電所(11.9)

 そして数分ほどで玄海原子力発電所に到着。御多聞にもれずこちらにも、「原発は安全」というデマゴギーを、金をかけた大仰な展示で信じ込ませるためのPR施設があります。人呼んで「玄海エネルギーパーク」、後学のため見物することにしましょう。拍子抜けしたのは、福島第一原発事故を受けてなんらかのリアクションやエクスキューズ(ここでは絶対に津波は起こらんですたい、とかね)があるかと思ったのですが、まったくの自然体であったことです。まるで原発事故などなかったかのように… 4号機の実物大原子炉模型や、原子力発電のしくみや安全性などについての解説など、ざっと眼を通しましたが、福島の事故で完全に破綻した"放射性物資を閉じ込める「5重の壁」"が平然と掲げられているのには驚きました。
c0051620_6192440.jpg

 第1の壁:ペレット(燃料)、第2の壁:燃料被覆管、第3の壁:原子炉容器、第4の壁:原子炉格納容器(鋼板の内張り)、第5の壁:原子炉格納容器(コンクリートの壁)というものですが、これにはその筋では有名なアネクドートがありますね。
 見学に来ていた小学生が係員に訊ねました。「第1の壁が壊れたらどうするの?」「第2の壁があります」「それが壊れたら?」「第3の壁があります」「それが壊れたら?」「第4の壁があります」「それが壊れたら?」「第5の壁があります」「それが壊れたら?」「…」「壊れたら?」「壊れません!」 ちゃんちゃん。
 それにしても、こちらの展示では、あんぜんあんぜんあんぜんあんぜんとマントラのように唱えておられますが、ほんとうに安全なのでしょうか。広瀬隆氏は、『FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン』(朝日新書298)の中でこう述べられています。
 1号機の運転開始が1975年、二号機は1981年。いずれもすでに30年以上経つ古い原発です。90年代に完成した3・4号機とあわせて、現在、四基の原子炉が稼働しています。このうち三号機は、2009年12月に全国に先駆けてプルトニウムを含むMOX燃料を使用するプルサーマル運転を開始し、全国から怒号を浴びた原子炉として、悪名高いものです。
 さらに2010年10月に、玄海一号機では、2009年の定期検査で原子炉から取り出した監視試験片で脆性遷移温度が98度に達していたことが明らかにされたのです。このむずかしい言葉は、原子炉の分厚い鋼鉄が毎日、中性子を浴びて脆くなり、ある温度以下で破壊される現象を意味します。それは、大事故が発生したときに、原子炉に冷たい水をドッと流しこむと、ガラスのコップに熱湯を注いだときに割れるようになることです。脆くなっている鋼鉄の原子炉が、一気にバリンと割れて破壊されてしまうという、これまで地球上で起こったことのない恐怖の原発事故を意味します。大きな船が一気に破壊する事故によって人類が学んだ科学です。ところが九州電力は、この老朽化原発を安全であるとして、平然と運転を続けているのです。
 では、そうした事故を誘発する地震はどうなのでしょうか。玄海原発の周辺地域は、古来から、大きな地震が少ない地域として知られてきました。…ところが2005年3月20日、突如、マグニチュード7.0の福岡県西方沖地震が発生しました。震源は玄海原発から直線距離でほんの40キロメートルほどの海底です。この付近には海底断層があることも知られていませんでした。断層がないと思っていたところに、実は断層が隠れていて、今まで観測されたことがない大地震を起こす可能性があるということが分かったのです。
 …玄海原発から約20キロメートルしか離れていない「糸島半島沖断層群」には、相当な注意を払う必要があります。…この断層は、長さ23キロメートルもある海底断層です。ここが動けばマグニチュード7.1クラスの地震の可能性があると九州電力は計算していますが、私はこの評価はあまりに甘すぎると思います。何しろ、玄海原発の耐震性は、2006年の耐震指針改訂後も全国の原発の平均より低い540ガルとなっていますので、最近は2000ガル規模の地震が続発しているこの国で、電力会社は一体何を考えているのだろうと、胸騒ぎを覚えます。しかもプルサーマルという最も危険な運転をしている九州電力の神経が理解できません。三号機が大事故に巻き込まれれば、九州全土がプルトニウムを浴びて、すべて廃墟になると分っているのですから。(p.204~7)
 どう言い繕えば"安全"という言葉が出てくるのでしょうか、九州電力、そして政官財学報=原子力マフィアのみなさん。これほど致命的な危険を冒してまで原発を稼働したい、その本音をぜひ聞かせていただきたいものです。電力の安定供給? ま、それもあるでしょうが、政治献金や省益、莫大な原子力関係の予算といった利権が目当てなのではないですか。さらに2012.6.20に成立した原子力基本法に「我が国の安全保障に資することを目的として」という文言をしのばせたように、核兵器所有への布石ということもあるのでしょう。天下無双の御用新聞・産経新聞ニュースは否定していますが。最近、『物語 イタリアの歴史』(藤沢道郎 中公新書1045)という超弩級に面白い本を読んだのですが、その中で西ローマ帝国初の皇帝ホノリウスを評したこんな言葉がありました。「決してばかではなく、保身と陰謀にかけてはなかなかの手腕を発揮したが、義務感と責任感と正義感をまったく持ち合わせていない人で、ローマ帝国がどうなろうと自分の身の安泰さえ確保されればそれで結構という態度を、露骨に示すことがたびたびあった」(p.13) 思わず噴飯し苦笑してしまったのですが、"ローマ帝国"を"日本"に言い換えて、"自分の身の安泰"に"核(原子力)発電所の存在"をつけ加えれば、原子力マフィアの皆々様方にそっくりあてはまります。さあ、アンデルセン童話の『赤い靴』の少女のように、彼らは原発をパートナーにしたチーク・ダンスをどこまで踊り狂うのでしょうか。そしてゲーテの『魔法使いの弟子』のように、使い方を知悉していない箒が凶暴に暴れ出した時に、それを停めてくれる老師は現れるのでしょうか。
 そして彼らのばらまく"安全"という言葉に安々と騙されてきた/いる私たちにも大きな責任があります。故ハロルド・ピンター氏の物言いを借りれば、この"安全"という言葉が、安心感という深々としたクッションとなり、私たちは頭を使わずずっともたれかかってきたのではないか。そしてこのクッションは知性や批判精神を窒息させてきたかもしれませんが、ひどく快適だった…
 なお迂闊にもあとで気づいたのですが、四階に発電所を見渡せる展望室がありました。原発写真愛好家(いるのかなあ)はお忘れなく。また玄海原発のキャラクターを使った顔はめ看板もあるので、顔はめ看板写真愛好家(これは一人はいる)はお見逃しなく。

 本日の一枚です。
c0051620_620079.jpg

by sabasaba13 | 2013-04-05 06:20 | 九州 | Comments(0)
<< 九州編(56):名護屋城址(1... 九州編(54):大浦・浜野浦の... >>