ザルツブルク音楽祭

 今年の夏、オーストリア旅行に行ってきました。ウィーン→リンツ→ハルシュタット→ハイリゲンブルート→インスブルックという旅程で計画を立て、JTBに飛行機とホテルをおさえてもらったのですが、どうしてもハイリゲンブルートでの宿がとれないとのこと。いたしかたない、予定を変更してザルツブルクに泊まることにしました。しかし夏といえばザルツブルク音楽祭の真っ最中、とてもチケットなぞ手に入るわけはないし、大混雑だろうし、ちょっとブルーになってしまいました。出発の数日前、何の気なしに音楽祭の公式HPを見ると、なんとわれわれが滞在する日のチケットが売れ残っています。A.パッパーノ指揮・聖チェチーリア音楽院管弦楽団によるベンジャミン・ブリテンの『戦争レクイエム』とハーゲン・カルテットによるベートーヴェンの弦楽四重奏曲。さすがにオペラや有名どころの演奏会は完売でしたが。これは是非聴いてみたいもの、しかしインターネットによる購入の仕方がよく分からないし、JTBに依頼するにも間に合いそうもありません。こうなったら当たって砕けろ、現地での入手に賭けましょう。聴けるかどうかわかりませんが、一応念のため事前にドレス・コードなどの情報を仕入れておきました。インターネットで調べたところ、さすがにタキシード姿は少ないものの、ほとんどの方がスーツ・ネクタイだそうです。うーむ、スーツに革靴はかさばるなあ。上着はなし、半そでワイシャツにネクタイ、コットン・パンツ、テニス・シューズで勘弁してもらいましょう。
 さてザルツブルクまでの道中はまたあらためてご報告するとして、現地に到着しました。さっそく本丸、祝祭劇場のチケット・オフィスに突入、『戦争レクイエム』のチケットの有無を山ノ神に訊ねてもらいました。ぱたぱた、キーボードを叩く音、どきどき、ときめく胸… あった! 残りは僅か四席、最前列が二席とロージェ(個室のボックス席)が二席。もちろん後者を購入、155ユーロとけっこうな値段ですが、憧れのザルツブルク音楽祭です。人生を楽しむために馬車馬の如く汽車犬の如く働いてきたのですから、諒としましょう。
 翌日の午前中はイーグルス・ネスト(ヒトラーの山荘)を見学し、午後はザルツブルク市内を散策。そしてホテルの部屋に戻って夕食のケバブを食べ、着替えをしました。私は半そでの青いワイシャツ、ノーネクタイ、コットン・パンツ、テニス・シューズといういでたち、山ノ神はシンプルなワンピースにハイヒールでいざ出陣。開演は午後九時なので三十分前に祝祭劇場に入ると、ロビーはもう人であふれかえっていました。やはりほとんどの男性はスーツ姿、女性はドレッシーな服装でしたが、カジュアルな格好をしている方も散見されます。入場を断られず、冷たい視線も感じなかったので、それほど過敏に考える必要はないと思います。なおプログラムはすでに売り切れ、手に入れることができませんでした。さて、祝祭劇場には三つのホール、フェルゼンライトシューレと大ホールとモーツァルトのためのホールがあります。映画『サウンド・オブ・ミュージック』に登場した、メンヒスベルク山の岩壁を削ってつくられたのがフェルゼンライトシューレで聴きたかったのですが、残念ながら本公演は大ホールでした。さてロージェへの行き方がわからずに右往左往していると、すぐに係の方がやってきて親切に教えてくれました。その係の数の多さにも驚愕、周囲を見回すと必ず視野に一人は入ってきます。「経営合理化なぞくそくらえ」「お客さんが第一」というその意気やよし。通されたのは個室の最前席、身を少し乗り出さないとステージ全面が見えないのですが、しかたないでしょう。そしてステージに楽団・指揮者・ソリストが登場、いよいよベンジャミン・ブリテンの『戦争レクイエム』の始まりです。指揮はアントニオ・パッパーノ、ソプラノはアンナ・ネトレプコ、テノールはイアン・ポストリッジ、バリトンはトマス・ハンプソン、演奏はサンタ・チェチーリア管弦楽団/合唱団。ただ不覚にも、半分あきらめていたので、この曲に関する事前学習をまったくしなかったことです。ブリテン畢生の大作にして、戦争に反対する思いを込めた曲、そういう漠然としたイメージしかありません。よって歌詞の意味もわからずに、ただ純粋にあふれでる音に耳を集中させるしかありませんでした。なおオーケストラの編成も変則的で、合唱団の伴奏は大編成、ソリストの伴奏は小編成と、二つに分けられています。(おそらく)ラテン語による荘厳な合唱、英語による叙事的でエキセントリックな独唱、そして時々ステージの陰から流れる天使のような歌声(ザルツブルグ祝祭少年合唱団)。緊張感にあふれる真摯な演奏にひきこまれ、あっという間に時は過ぎていきました。大歓声に応えてのカーテン・コールを撮影しながら、これは何としても帰国したらCDを購入して聴き直さなければと決意。
 人ごみをかきわけて賑わうロビーから外へ出ると、劇場の前には名だたる高級車がずらりと並んでいました。日本の演奏会では味わえない雰囲気ですね。われわれは気持のよい夜風をあび、街灯に光る街並みや石畳を愛でながら歩いてバス停へ。

 本日の四枚です。
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by sabasaba13 | 2013-10-05 06:20 | 音楽 | Comments(0)
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