イタリア編(10):1900年代美術館(12.8)

 そしてバスへと戻り、出発地のカイローリ広場でツァーの解散です。これから大聖堂の近くにある1900年代美術館を見学して、ミラノ中央駅から14:30発の列車に乗ってクレモナに行き散策、そしてミラノに戻り夕日に輝く大聖堂と屋上からの眺めを満喫する予定です。まずは地下鉄に乗って二つ目のDUOMO駅で下車、大聖堂を右側から写真におさめ、すぐ隣にある1900年代美術館に入館。
イタリア編(10):1900年代美術館(12.8)_c0051620_6162699.jpg

 2010年に開館した新しい美術館で、主にイタリアの20世紀絵画と彫刻を展示しています。どういうわけか入館は無料、こいつは夏から縁起がいいわい。内部はさほど広くはありませんが五階建てで、ドゥオーモと広場を飢えから眺めることができます。ボッチョーニ、バッラ、デ・キリコなどの作品を愉しみ、いよいよお目当てのペリッツァ作の『第四階級(il Quarto Stato)』へ。実は『地球の歩き方』の解説と写真ではじめて知った絵で、一目見て忘れ得ぬものでした。横長のキャンバスに、男性二人女性一人を先頭に、あふれるばかりの労働者たちがこちらを凝視し力強く歩んでくるという絵です。これはどうしても見たいとこちらにやってきたのですが、実物を前に予想にたがわずその迫力とインパクトに圧倒されました。制作は1901年、教会(第1階級)・貴族(第2階級)・ブルジョワ(第3階級)に虐げられてきた労働者(第4階級)の覚醒と蹶起を見事に描ききっています。労働者がグローバル資本によってずたずたに引き裂かれ、どん底への競争を強いられている今だからこそ、心に刻みたい絵ですね。パルミロ・トリアッティの"われわれは遠くからきた。そして、われわれは遠くまで行くのだ"という言葉(白土三平の『忍者武芸帳』にも引用されていましたっけ)も耳朶に響きます。なお私は未見なのですが、ベルナルド・ベルトルッチ監督の 『1900年(Novecento)』のオープニングタイトルにもこの絵が使われているそうです。また作者のジュゼッペ・ペリッツァ・ダ・ヴォルペード(Giuseppe Pellizza da Volpedo)は、19世紀末に興った「ディヴィジオニズモ(Divisionismo)」という点描を用いた新芸術運動の流れをくんでおり、私の大好きなジョヴァンニ・セガンティーニ(Giovanni Segantini) もその重要な一員だそうです。
 眼福眼福、目もくちたし、それでは中央駅へと向かいましょう。ところがなかなか地下鉄がやってきません。やきもきしながら待つこと十数分、やっと入線してきた列車に乗り込み中央駅(CENTRALE F.S.)に到着。切符も買ってあるし余裕の吉田健一、でも念の為小走りでホームへと移動すると…14:30発の列車が三本あり、そのうちどれがクレモナを通るかわかりません。発車まであと三分、ああ発車ホームを確認しておくべきであったと悔やんでもil carnevalata dopo(ほんとかな)。おっ渡りに舟、地獄で仏とはこのこと、女性駅員さんが通りかかりました。すぐさま山ノ神が英語で訊ねましたが、「電光掲示の時刻表を見て」と木で鼻をくくったような対応。わ、か、ら、ん、か、ら、き、い、て、る、ん、や、と大阪弁でまくしたてたい気持ちを、日伊親善のためぐっとおさえ右往左往しているうちに、無情にも時計の針は午後二時三十分をまわってしまいました。finito… "この時我身いかばかり冷えわが心いかばかり挫けしや、読者よ問ふ勿れ、言及ばざるがゆゑに我これを記さじ。(『神曲』 地獄第三十四曲)" ちなみに今回のイタリア旅行で不愉快な思いをしたのはこの時とあと一度だけでした。

 本日の一枚です。
イタリア編(10):1900年代美術館(12.8)_c0051620_6165038.jpg

by sabasaba13 | 2013-11-15 06:17 | 海外 | Comments(0)
<< イタリア編(11):ミラノ(1... イタリア編(9):サンタ・マリ... >>