イタリア編(56):ペルージャ(12.8)

 時刻は午後六時半、11月4日広場もそろそろ賑わいはじめ、オンブラ(日陰)となったプリオーリ宮の石段では、いろいろな人種・民族の方々が坐って、三々五々のんびりと涼をとっています。白い肌、黒い肌、黄色い肌、褐色の肌、どこの国の人なんだろう…いやどこの国でもいい。パブロ・カザルス曰く、"われわれは一本の木につながる葉である。人類という木に"。生来、人間は、容姿や文化や国籍が違うだけで、憎み合い貶め合い殺し合うものではなく、困った時には助け合うものだと信じます。それでは何故、他者や他国を憎み、貶め、特に20世紀以降は恐るべき規模での殺戮をくりかえすようになってしまったのか? さすがはダンテ、彼の炯眼は見抜いていたようです。"自負、嫉妬、貪焚は人の心に火を放てる三の火花なり (地獄第六曲)" 人間を焼き尽しかねないこの三つの業火を、過去の人々はさまざまな慣習や制度や宗教や思想によって辛うじて抑え込んできたのではないのでしょうか。それをすべて解き放ってしまったのが近代という時代ではないのかな、と最近考えています。貪焚を軽々と充足させるテクノロジー、貪焚を糧に成長する資本主義経済、自負と嫉妬を煽るナショナリズム。憎悪と殺戮と貧窮と環境破壊を食い止めるために、どうやってこの三つの業火を消し止めるか、人類のpoint of no returnはもう眼前に迫っています。
 と柄にもなく真剣に考えていると…ぶるぶる…ん?…ぶるぶる…手が震えてきたぞ。これは…禁断症状だ。そういえば昨日からジェラートを食べておりませぬ。さっそく近くのお店に入ってジェラートを所望、二人で石段に腰かけていただきました。
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 さて時刻は午後六時半、まだまだ残照が残っています。とりあえずホテルに戻って一休みをし、夜景を見るために出直すことに決定。途中で我々ご用達の小さなスーパーマーケットに寄って、ミネラルウォーターの大きなペット・ボトルを購入。なおペルージャにいる間に愛飲した水は「ROCCHETTA」という銘柄でした。でもあらためて店構えの写真を見ると、なんてことない小さなお店だと思っていたのに、石積みでできた風情ある趣でした。ホテルの近くには、路上に色チョークでゴーギャンの絵が描いてありました。
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 部屋に戻り、ベッドにごろろんと横たわり転寝。一時間ほどで目を覚まし『神曲』をすこし読んでいると、そろそろ夕闇が部屋の中にもしのびこんできました。窓から外を眺めると、そろそろ街の灯も煌めきはじめています。それではそろそろ出かけることにしましょう。街灯がかもしだす石畳や建物の陰翳を愛でながらカルドゥッチ公園へ、宝石箱のような街の夜景を楽しみました。
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 そして11月4日広場へ、迷宮のような路地へと忍び入りながら絵になる光景を撮影。時刻は午後九時をまわっていますが、けっこう人通りもあり、みなさん古都ペルージャの夜風に吹かれて幸せそうです。ヴァンヌッチ通りを歩いていると、路傍でJ.S.バッハの無伴奏チェロ組曲第一番、プレリュードを弾いている芸人さんがいました。それほどの腕前ではありませんでしたが、石の街にかの名曲が反響し得も言われぬ気分でした。前に置かれた楽器ケースに1ユーロを入れ、イタリア広場へ。
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 ちょいと小腹がへったので近くにあったセルフサービスのカフェに入って、ピッツァをいただきました。味は…言わぬが花。
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 さてそれではペルージャともお別れです、Arrivederci, Perugia! 旧市街の街並みを網膜に焼きつけながらホテルへと戻り、明日の出立にそなえて荷物をまとめ、就寝。

 本日の五枚です。
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by sabasaba13 | 2014-01-20 06:23 | 海外 | Comments(0)
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