『政府は必ず嘘をつく』

 『政府は必ず嘘をつく -アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること』(堤未果 角川SSC新書)読了。同じ著者による『(株)貧困大国アメリカ』(岩波新書)がたいへん面白かったのと、書名に惹かれて、本屋さんで即購入しました。これはハワード・ジンという歴史学者の言葉だそうです。"政府は嘘をつくものです。ですから歴史は、偽りを理解し、政府が言うことを鵜呑みにせず判断するためにあるのです"(p.19) アメリカを貧困大国化させている元凶である〈コーポラティズム(政府と企業の癒着)〉を推し進めるため、政府がいかなる嘘をつき、国民がそれを信じた結果、この十年で何が起こったのか。TPPによって次なるカモにされようとしている私たちとしても、ぜひ知っておくべきでしょう。あるアメリカ人が語った話です。
「財界の思惑に押された政府やマスコミ、自由貿易推進者たちは、数十年前からずっと同じことを言って国民を欺いてきました。海外から安い製品が山のように入ってくる、支払額が減って皆ハッピーだろう? と。ですが彼らは、この安価が連れてくるもうひとつのコスト、この国の経済を根柢から破壊するもうひとつの高いコストについては決して言及しないのです」
「もうひとつの高いコストとは、何でしょうか?」
「自国の製造業です。その兆候は、〈99セントショップ〉が国中に現れた時から始まっていました。政府の規制緩和によって、製造業が次々に国外に出て行き始めた頃です。政府やマスコミの言う〈グローバル化〉〈国際競争力〉という耳触りのいい言葉の下で、私たちは思考停止していたのかも知れません。モノがびっくりするほど安く買えることに夢中になって、気づいた時には失業率も跳ね上がり、賃金は海外労働者の出現で下がり、手に取るもの全てが海外産になっていたのです」
「自由貿易で国が繁栄するという政府の言葉は、事実ではなかったと?」
「繁栄どころか、もし我々の国から第二次産業が流出し続けていったらどうなります? アメリカという国は消滅してしまう。国家の形をした、巨大な株式会社になってしまうでしょう。財界と政府の距離が近くなりすぎると、国の優先順位が国民ではなく企業利益という数字に変わるのです。そして、優先順位の下に落ちた私たちには、正確な情報は知らされなくなるのです」 (p.78~9)
 福島や沖縄で起きていることを見ると、私たちの優先順位が落とされたことを思い知らされます。第一位、アメリカ合衆国、第二位、大企業、着外、国民。「東京オリンピックによる景気と元気の回復」という虚言に弄されて躍っている方々に、この冷厳なる事実に気づいてほしいものです。例えば2011年11月、その東京都が放射性物質瓦礫を受け入れましたが、都から費用をいただいてその処理を行なうのはただ一社、「東京臨海リサイクルパワー」で95.5%東京電力が出資している子会社なのですね。東京電力は、瓦礫処理にかかる費用を一切負担しなくてもいいどころか、汚染瓦礫の処理で利益を得ることができ、さらに瓦礫焼却による発電からも利益を得られることになります。 なぜ、東京都は都民の反対を無視して、瓦礫の受け入れと焼却を強行したのか。そして、入札とはいえ、なぜ東京電力のグループ企業が瓦礫の焼却をすることになっているのか。
 設立以来、東電に天下りした官僚の約半数を、東京都幹部が占めている(2位は経済産業省)。そして東京都は、東電の大株主なのだ。株主はその企業に損失が出ると影響を受ける。税金を使った政府プロジェクトについて、私たちはそこで動く資金と受注企業、関連団体を注意深く見てゆく必要があるだろう。(p.166~7)
 やれやれ、石原元強制収容所所長が、批判に対して「黙れ」と一喝したのも宜なるかな。心の中では「都民なぞどうでもいいんだ、俺と都の利権に口を出すな」とおっしゃっていたのでしょう。第一位、首長と都官僚、第二位、大企業、着外、都民。
 さて「政府や権力者は嘘をつくもの」と銘肝したうえで、単に政府を批判するだけではなく、未来を創る際の選択肢を他人任せにせず自分で考えなくてはいけない、と堤氏は主張されます。そのためには正確な情報と他の選択肢を提示するマスコミの役割が欠かせないのですが、その現状を見ると、堤氏と同様に暗澹たる気持ちとなります。本書で紹介されていたジプシー・トーブ氏(ロシア人ジャーナリスト)の言です。
 私の国であれだけ政府に都合がいい報道をさせようとしたら、ジャーナリストを拷問することになるでしょう。いったい日本政府は、どんな方法を使っているのですか? (p.95)

by sabasaba13 | 2014-02-19 06:17 | | Comments(0)
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