イタリア編(89):アウガルテン(12.8)

 今では緑豊かで長閑な公園ですが、かなり遠くから見えていた異形の巨大な建築物が、まるでウェディング・ケーキにへばりついた毒蜘蛛のように目立ちます。うわあ、でかい… これはナチス・ドイツが建設した高射砲塔です。そばに近づくと、周囲に金網が張り巡らせてあり、接近はできません。
イタリア編(89):アウガルテン(12.8)_c0051620_918540.jpg

 それにしても、まるで現役の施設であるかの如く、破損や崩壊がまったくないのには驚かされます。ナチス・ドイツの、最高の技術を動員して戦争を遂行しようとする鉄のような意志をまざまざと感ずることができました。以下、「ARCHITECTURAL MAP」から要約して引用します。
 1938年にドイツと併合したオーストリアは第二次世界大戦中に連合国軍の爆撃を受けるようになり、ウィーンの防空のために高射砲塔が建設されました。高射砲塔は二基一組で運用されて、このワンセットがウィーンを取り囲む三角形を描くように配置されました。あまりにも頑丈すぎて解体には巨額の費用を要するために、高射砲塔は6基とも現存しています。塔の高さは30~40m、爆弾の直撃に耐えられるよう壁は2.5~5mもの厚さがあります。壁面上部に片持ちで突き出ている円形バルコニーのところには、防御用の機銃が据えられていました。その下に何本も突き出ている竿のような部分の機能は分かりません。高層塔を建設したのは、平地で高射砲の射界を広く確保するためという軍事上の理由によりますが、これほどの巨大構造物を高射砲陣地だけに使うのはもったいないわけで、内部は最大3万人の市民を収容するシェルターになっており、空調や発電機等の設備、医療施設、食料庫なども備えていました。設計はドイツの土木技術者フリードリッヒ・タムス。ベルリン市橋梁建設局をはじめ、アウトバーン建設顧問や戦後はドイツ都市国土計画アカデミー会長などを歴任し、戦前戦後を通して土木構造物の設計や都市計画に活躍しています。
 なお付近には、同じく巨大な四角柱型のレーダー指揮所があるはずですが、時間の関係で訪問は省略しました。

 本日の一枚です。
イタリア編(89):アウガルテン(12.8)_c0051620_9182770.jpg

by sabasaba13 | 2014-03-09 09:19 | 海外 | Comments(0)
<< イタリア編(90):ウィーン・... イタリア編(88):アウガルテ... >>