集団的自衛権

 憲法解釈による集団的自衛権容認へと、ぶいぶいぶいぶいと邁進する安倍晋三伍長と石破茂上等兵。政官財黒い三角形の走狗にして天下無双の御用新聞・産経新聞ニュース(2014.2.13)によると、その石破上等兵が、『日本人のための「集団的自衛権」入門』(新潮新書)という本を上梓されたそうです。"最も大事なことは敵から教わった"(アリストパネス)、ほんとは読まなくてはいけないのでしょうが、"盗人に追い銭"、とても購入する気にはなれません。よって確認はできないのですが、本書で氏は、日本が集団的自衛権を行使できない現状について、友人が強盗に襲われた時には家の掟で助けに行けないけど、僕がやられたら助けにきて、と身勝手な要求をするようなものだ、と例え話で説明しているそうです。この程度の与太話で国民が騙せると考えるほど石破上等兵の知的レベルが低いのか、あるいはこの程度の与太話で本当に騙されてしまうほど国民の知的レベルが低いのか、断定できないのが辛いところです。前者だとよいのですが。
 それはさておき、上等兵は一般論にすりかえて誤魔化そうとしていますが、その友だち(宗主国にそんな馴れ馴れしい口をきいてよいのかという点はおいといて)というのは、そんじょそこらの国でありません。世界で最も凶暴なならず者国家・アメリカ合衆国です。いったいどこの国がアメリカに強盗をはたらくのか、教えていただきたいものです。アメリカ外交政策の基調は、「目障りな相手を強盗と決めつけて叩き潰す」、いわゆるブッシュ・ドクトリンです。「脅威が増大すればするほど行動しないことの危険性が増大し、かくて、たとえ敵の攻撃の時間と場所が不確定な場合であっても、我々を防衛するために先制的に行動する」、いわゆる先制攻撃論ですね。なお豊下楢彦氏は、『集団的自衛権とは何か』(岩波新書)の中で、レーガン政権によるグレナダ侵攻(1983)や、ブッシュ・シニア政権によるパナマ侵攻(1989)など、これは米国外交における"伝統"であると指摘されていますが。
 そして悪質なのは、脅威を隠れ蓑にして、軍事力によってアメリカの国益や大企業の利益を貫徹してきたことです。イラク戦争を例にとり、石破上等兵にもわかるようなたとえ話にすると、「奴は金持ちだから、ピストルをもって俺を狙っている強盗だということにしてぶちのめし、金目の物をふんだくってやろう」ということですよね、たぶん。"嘘だと言ってよ、ジョー"と言いたいところですが、残念ながらこれが歴史的な事実です。詳しいことを知りたい方は、ぜひ、『日本は悪くない 悪いのはアメリカだ』(下村治 文春文庫)、『(株)貧困大国アメリカ』(堤未果 岩波新書1430)、『戦争はなぜ必要か』(トーマス・バーネット 講談社インターナショナル)、『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』(ジョン・J・ミアシャイマー スティーヴン・M・ウォルト 講談社)、『アメリカ帝国の悲劇』(チャルマーズ・ジョンソン 集英社)、『パクス・アメリカーナの五十年』(トマス・J・マコーミック 東京創元社)、『好戦の共和国アメリカ』(油井大三郎 岩波新書1148)、『ポスト・アメリカ』(イマニュエル・ウォーラーステイン 藤原書店)、『素晴らしきアメリカ帝国』(ノーム・チョムスキー 岡崎玲子訳 集英社)、『狂気の核武装大国アメリカ』(ヘレン・カルディコット 岡野内正/ミグリアーチ慶子訳 集英社新書0450A)、『「テロリスト」がアメリカを憎む理由』(芝生瑞和 毎日新聞社)、『お節介なアメリカ』(ノーム・チョムスキー ちくま新書676)、『戦争中毒 アメリカが軍国主義を抜け出せない本当の理由』(ジョエル・アンドレアス きくちゆみ監約 グローバルピースキャンペーン有志訳 合同出版)、『アメリカの国家犯罪全書』(ウィリアム・ブルム著 作品社)をご一読ください。ああ疲れた。

 ということで、集団的自衛権、同盟を結んだ国への攻撃を自国への攻撃と見なしそれを阻止することを憲法解釈によって容認するとどうなるのか。結果は火を見るより明らかです。どういう状態がアメリカに対する強盗行為なのかを認定するのはもちろんアメリカ政府であり、日本政府はその先制攻撃に加担させられるでしょう。いわばアメリカの"やれやれ詐欺"の方棒を担ぐことになりますね。理不尽かつ没義道な殺戮を受けた人々はアメリカとその属国・日本に刃を向け、テロルによって復讐をはたす可能性は大です。後者については簡単ですね、54基もある核(原子力)原子力発電所の数カ所に自爆攻撃を仕掛ければ、瞬時にして亡国とすることができます。荒唐無稽な戯言でしょうか?
 いくさの準備をすれば、いくさが寄せてきますよ。(『琉球処分』 大城立裕)
 安倍晋三伍長に熨斗をつけて進呈したい言葉です。それにしても、安倍伍長といい、石破上等兵といい、なぜシオマネキのように"いくさ"を呼び寄せとするのでしょうか。もちろん、日本が戦火やテロルに巻き込まれた時には、ご本人およびご親族ご一行様が脱出する手段およびのうのうと暮らせる避難場所はすでに確保されていると思いますので後顧の憂いはないとは思いますが、なぜ私たちを犠牲にしてまで"いくさ"の準備をするのか。アメリカの属国としての地位を未来永劫維持したい、日本の軍需産業の要望に応えたい、中国・韓国・北朝鮮に強面で対したい、戦争の出来る国になって自尊心を満足させたい、純粋に(自分たちは安全な所にいて)日本が戦争する場面を見てみたい、理由はいろいろ考えられます。が、いま一つほんとうのところが見えてきません。安倍伍長、石破上等兵、そろそろ本音を語っていただけませんか。もう与太話は聞き飽きました。
by sabasaba13 | 2014-06-14 06:30 | 鶏肋 | Comments(0)
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