越後編(60):摂田屋(13.3)

 話が長くなり、お腹もへってきました。それでは宮内駅のすぐ前にある青島食堂へ突入、お目当てはご当地B級グルメの長岡ラーメンです。ウィキペディアの受け売りですが、長岡市発祥のラーメンで、豚ガラを多く使い、生姜の風味がきいた醤油味のスープと柔らかめのチャーシューが組み合わされるそうです。おお来た来た、苦しうないぞ近う寄れ。おおこれは美味しい、生姜の香りとこってりとした醤油味のスープがよくマッチしています。普通列車に乗って長岡駅に戻り、コインロッカーから荷物を取り出して上越新幹線に乗り込み帰郷の途につきました。途中の越後湯沢駅で林立するリゾートマンションが見えましたが、現状はどうなっているのでしょうか。
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 おおむね想像はつきますが。気になったので、今、インターネットで調べてみました。「NAVERまとめ」というサイトによると、バブル+スキーブームがあった1990年前後に湯沢町には、50棟ものリゾートマンションが建設されましたが、現在はその多くが無人の空き家となっているそうです。もともと投資目的で買った人が多いから、プールや温泉つきのマンションに高額の管理費・固定資産税を支払うのは大変し、本体の価格は買値の1/10以下。早く手放したいとタダ同然で売りに出していますが買い手も見つからず、当時は数千万円から数億円で飛ぶように売れたマンションが、数百万円、場合によっては50万円で売られているとのこと。またそしてバブル崩壊と共に、越後湯沢の温泉街は寂れ、廃業したホテルの姿が目立ち、駅前の商店街は完全にシャッター商店街と化しているそうです。投資によって一攫千金、濡れ手に粟の儲けを得ようという風潮。目先の流行に走り、快楽を求める人びと。財政基盤が弱く、投資を呼び込むことに汲々とする地方。そうした地方の弱みにつけこんで、東京にあっては困るもの(原発・米軍基地)を押しつける政府。日本の病根の一端を垣間見た思いです。ラージガードに刻まれたガンディーの碑文「七つの社会的罪」で言えば、理念なき政治、労働なき富、良心なき快楽、道徳なき商業に該当します。なお残り三つは、人格なき学識、人間性なき科学、献身なき信仰。
 研究費と権益欲しさに政官財に癒着する学者が、人格と人間性を失い、多くの民衆に甚大なる害を与えた例は、水俣病や原発事故をはじめとして多々あります。またガンディーは自ら選びとった信仰にたいして献身を求めたのだと思いますが、おらが国では愛国心という信仰を強要して国家権力への献身を求めています。やれやれ、これで七つの社会的罪すべてが出そろったわけだ。日本という国を飛行機に譬えると、このまま飛び続けることは不可能なのではないでしょうか。セルジュ・ラトゥーシュ氏の言を借りると、胴体着陸か、墜落か、どちらかを選ばなくてはならない状況なのかもしれません。そして列車は深い闇をたたえるトンネルの中へと突き進んでいきました。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2014-08-11 07:07 | 中部 | Comments(3)
Commented by りくにす at 2014-08-13 16:25 x
実は私も「私をスキーに連れてって」の時代に苗場に行ったことがあります。玄関を出ればスキー場になっているマンションを前にナイトスキーを楽しみましたが、あれ、いま空き家なんですか。
フランス人はバカンス好きだけど、ケチでもあるからそういう無駄なものは買わないそうですね。友人宅などに滞在して釣りや散歩を楽しむそうです。景気が後退したから休暇が増えると思ったら全然増えやしませんし。
ジェイン・ジェイコブスの『発展する地域 衰退する地域』(中村達也訳 ちくま学芸文庫)を読んで以来話の通じる人を探すようになってしまいました。本書は産業と経済の話中心で原発推進側の論理をどうこう言う本ではありません。「国民経済」を地域単位でみるとこうなる、といった本です。資源枯渇や公害の話は出ないのに、いまの世界経済が行き詰まることが見えてしまう。
アメリカも日本も「覇権」のために資本を使いすぎたので産業が衰退したのだ、ということがわかります。
それにしても、リゾートマンションの廃墟を見て未来の人は何を思うのでしょう。
Commented by りくにす at 2014-08-13 16:31 x
追加。リゾートマンションではなく小さなホテルに泊まってました。こちらの方が遠くてホテルの送迎車でゲレンデに行きました。
マンションは当時でも明かりのついている部屋はなかったような気がします。
Commented by sabasaba13 at 2014-09-02 22:33
 こんばんは、りくにすさん。コメントをありがとうございました。私たちも同時期、苗場プリンスホテルに宿泊してスキーをしたことが一度だけあります。しかし、その虚飾に満ち殺伐としてけたたましい雰囲気に辟易し、再訪はしておりません。地に足のついた、ヒューマン・スケールのレクリエーションを私たちが見出さないかぎり、「苗場の悲劇」は何度でもくりかえされるでしょうね。
 ジェイコブスの本、面白そうですね。記憶にとどめ、機会があったら読んでみたいと思います。
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