将来の夢

 中立性を装いながら権力に迎合し、権力の発信する情報を垂れ流す凡百のマス・メディアは浜の真砂ほどあれど、権力を監視し批判する硬骨なジャーナリズムは稀有な存在となってしまいました。その一つが『DAYS JAPAN』、定期購読して愛読しています。2015年2月号でも、マス・メディアが権力の暴走を大きく報じなかった不作為の事例を二つ知りました。
 まずは沖縄。昨年、県知事選挙と衆議院選挙において、反米軍基地という一点で団結したオール沖縄が劇的な勝利をおさめました。その背景には、2013年11年25日、沖縄県選出・出身の自民党議員5人が石破茂幹事長と会談、これまでの公約を破り普天間基地の辺野古移設を容認した事件がありました。那覇市議会議員・元自民党新風会の屋良栄作氏曰く、「あれでスイッチが入った」。かりゆしグループ会長の平良朝敬氏曰く、「自分の頭を踏みつぶされたような思い、"平成の琉球処分"」。自民党の横暴と沖縄の人びとの怒りをきちんと伝えたジャーナリズムはあったのでしょうか。(p.24~31) なおその記者会見の様子を写した写真が掲載されていましたが、石破上等兵と議員2人の能面のような無表情と、残り3人の屈辱感に満ちた悲痛な表情の対比が印象的です。一人は石破上等兵を睨みつけていますね。いったい自民党は、彼ら/彼女らを寝返らせるために、どんな甘言・利益供与・恐喝を与えたのでしょう。ま、自民党にとっては所詮collateral damage、他者の痛みなど知ったこっちゃないのでしょうが。沖縄や福島、慰安婦の方々への木で鼻をくくった態度もむべなるかな。
 次に斎藤美奈子氏のコラム、「前途多難な2015年に目指すべきはKKだ!」(p.51)。衆議院選挙で自民党は2議席を減らしたのに、大手メディアの見出しは… 「自公大勝 3分の2維持」(朝日)、「自公圧勝 320超」(読売)、「自公3分の2超 圧勝」(産経)、「自公勝利 3分の2維持」(日経)、「自公3分の2維持」(東京)。毎日新聞だけが「自公微減 291議席」、しかし最終版では「自公横ばい 291議席」。(自民党から圧力があったのかな?) 氏曰く、"あれほど「大勝」「圧勝」と報道されたら、有権者は「投票に行っても何も変わらないんだ」という印象を持ち、ますます選挙離れを起こすだろう"。なおKKとは、KY(空気を読む)のではなく、空気を変えようという斎藤氏のメッセージです。拙ブログも微力ながらその一助になれればと思います。

 今日一番書きたかったのは、そして一人でも多くの人に知ってもらいたかったのは、「DAYSフォローアップ」の中で紹介されていた、おしどりマコさんが教えてくれた「こぼれ話」です(p.50)。福島第一原発事故で東京に非難した一家、その小学校三年生の息子さんは、毎日泣いて暮らして学校へ行くのも一苦労だったそうです。将来の夢という作文の内容は、「僕には夢も将来もない」というもの。しかし小学校六年生になって書いた卒業文集に、初めて将来の夢が出てきました。以下、紹介します。
 僕は6年生の時に、国会議員になりたいという将来の夢ができました。その理由は、6年生の時に起きた2つの政策が原因です。
 まずは、6月1日に閣議決定された『集団的自衛権』の容認です。国のとっても重要なことが、国会の審議も行われぬまま、安倍さんの愉快な仲間たち(内閣)だけで決められてしまい、簡単に国の宝である平和憲法を踏みにじったということが、許せない気持ちになりました。
 そして、もう一つは、4月1日にほとんど名も知られないまま『防衛装備移転三原則』を閣議決定していたということを知ったことです。これによって、それまで武器の輸出を禁じていた『武器輸出三原則』が消されてしまい、日本も銃やレーダーを、外国に向けて大量に輸出できるようになってしまいました。この政策の影響を受けて、6月にパリ郊外で行われた武器の展示会『ユーロサトリ』では、よく見かける日立や富士通、東芝など13社もの日本企業がたくさんの武器等を出展していました。
 こんな、世界を揺るがしてしまう重要なことが、今では、国民にほとんど知られることもなく簡単に決めることができてしまっていることがわかり、とても恐ろしくなりました。
 だから、僕は今、一生懸命勉強して国会議員になって、この戦争の方向に密かに、しかもどんどん向かってしまっているこの国をどうにかして、これまでのような、世界から見て『とても平和な国』だと言われ、そのことを永久に誇れる素晴らしい日本に変えていきたいです。
 東京に避難してから、いろいろなことを考え、いろいろな学生ボランティアに接し、いつの間にこんな作文を書くようになったの、お母さんは驚かれたそうです。
 ひさしぶりに、忘れかけていた希望や勇気を思い出させてくれた文章でした。安倍伍長と愉快な仲間たちに是非読んでもらいたいですね。金儲けのためなら、人間の命や尊厳など一顧だにしない彼らの姿、 それを"許せない""恐ろしい"と感じる子どもがいることに感銘を受けました。昨年末の衆議院総選挙で投票率52.66%という、開いた口がふさがらない体たらくを見せた大人の一人として、子どもたちのためにも頑張らねばとあらためて思いました。
 ただ一つ、"これまでのような、世界から見て『とても平和な国』だと言われ、そのことを永久に誇れる素晴らしい日本"という部分にはかなりの留保が必要でしょう。もちろん、公式な戦争をしてこなかったのは百も承知ですが、朝鮮戦争やベトナム戦争におけるアメリカへのさまざまな援助や協力、そしてそこから得た莫大な利益、さらにはアジアの開発独裁政権との癒着による権益の確保。国内でまかりとおる、ありとあらゆる差別。(沖縄・アイヌ・在日朝鮮人・在日外国人・被差別民・女性・非正規労働者…) これまでの日本が「とても平和な国」だ言うことには二の足を踏みます。「三流の帝国主義国」と言った方が正確だと思えます。ま、安倍伍長が目指しているのは「二流の帝国主義国」への格上げなのでしょう。本当の意味で日本を「平和な国」「一流の平和国家」にするため、○○君、いっしょに頑張りましょう。
by sabasaba13 | 2015-01-21 06:31 | 鶏肋 | Comments(0)
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