北海道編(34):納沙布岬(13.9)

 思うに、日本くらい隣国と領土問題を抱えている国も珍しいのではないでしょうか。ロシアとは"北方領土"、中国とは"尖閣諸島"、韓国とは"竹島"。これらの問題を解決することは、われわれにとって二つの意味で喫緊の課題だと考えます。
 まず一つ目。今、この国に瀰漫している、目を覆いたくなるような品性低劣なナショナリズムを燃え上がらせる燃料源を絶つため。鵜飼哲氏は、『ナショナリズム論・入門』(大澤真幸・姜尚中[編] 有斐閣アルマ)の中で、こう述べられています。
 自国および世界の現状を否定して未知の将来に賭ける気概が失われたとき、過去の歴史はもはや、緊張に満ちた対話の相手ではなくなる。それは現状を肯定し正当化する目的のためだけに動員され、「修正」され、編集されるべき素材に過ぎない。そして将来に向けて自己を高める意欲もなく、現在の自己に対する評価も内心芳しくなく、そして、それでも自己が上昇する幻想にだけは耽りたいとすれば、そのための唯一の手段は他者をおとしめることである。このようにして、グローバル資本支配下のナショナリズムは、歴史との絆を否応なく喪失し、とめどのない他者蔑視に陥ることになる。(p.351)
 「日本固有の領土を分捕ろうとするやな奴ら」と他者を貶めることによって、"自分たちは正しい"という幻想と快感に耽るのはもうやめた方がいいのでは。
 二つ目。この問題がある限り、アメリカの軛から逃れられないということ。アメリカにとって理想的な状態とは、日本が隣国と戦争に至らない程度の緊張を抱えていることです。そうすれば、"暗証番号の必要ないATM"日本からガバガバとお金を引き出して、在日米軍基地を維持できますから。また軍事力を強化して日本を"なめられない国"にしたい安倍伍長のような御仁たちにとっても、領土問題は格好の口実になるでしょう。もちろん三菱重工業をはじめとする軍需企業からの政治献金も増えるでしょうし。
 というわけで、「領土をめぐる緊張→軍事力強化と軍事費増大→社会保障費の削減→国民の不安と不満→強面な主張で隣国を貶め自己満足に浸る→ますます緊張が高まる→…」という気の滅入るような悪循環を断つためにも、一刻も早い領土問題の解決を望みます。では具体的にどうすればよいのか。まずは"日本固有の領土"という硬直した発想をやめることでしょう。ちょっと考えれば、"固有の領土"なんてあり得ないことは分かりそうなものですが。そして互いの利益になるような柔軟な対応をとること。テッサ・モーリス=スズキ氏が、『ナショナリズム論・入門』(大澤真幸・姜尚中[編] 有斐閣アルマ)の中で、こう述べられています。
 国民国家は近代的な産物であり、その辺境地域をめぐる統治は、自然や過去のつながりよりもむしろ、政治によって決定されてきたのだった。日本のような「島国」でさえも、多様な歴史と重層的な空間によって織り成されているのである。これらの事実を踏まえるならば、ある特定の場所を「わが国固有の領土」であると定義するような歴史の政治的利用は非常に胡散臭いと言えるだろう。たとえば、最も古い文書記録によれば、クリル/千島列島南部にはアイヌの人々が生活していたことが明らかになっている。そしてそのほとんどのアイヌは、同意することもないままに近代日本の国民国家に包摂されていったのだった。よって、そのような歴史を背景として、同列島が日本に「自然に」あるいは「固有に」帰属するという主張の根拠とすることはあまりにも脆弱なのである。じつは、最初に同列島を訪れ記録したのはオランダ人であった。しかし今日、誰もそのような事実が、オランダに列島の支配を主張する権利を与える根拠となるとは議論しないであろう。そしてここしばらくは、ロシアと日本が、同列島の権利をめぐり議論している。同列島の争いにしろ、釣魚島/尖閣諸島の領土をめぐる争いにしろ、歴史はそのような争いに単純明確な答えを出すものではないのだ。歴史とは、問題の存在を現在に問い返すことに過ぎないのである。すなわち、末来の新たなる争いの下地となるような敵意に満ちた遺産をつくることよりも、複雑に絡み合う近隣社会の権益に公平に配慮した紛争の解決策を見つけることが求められているのである。(p.107~8)
 具体的な方策については、伊勢﨑賢治氏が、『日本人は人を殺しに行くのか』(朝日新書485)の中で紹介されている「ソフト・ボーダー(柔らかな国境)」というやり方が参考になるでしょう(p.197)。領土を双方で防護し合うのではなく、両国の協力で管理する国境です。国境としての実効線はあるけれども軍事化はしない。互いに迷惑である密輸などの違法行為取り締まりは、警察間で協力するが、そこに軍を置いて銃を突きつけ合ったりはしない。場合によっては、国境を帯状の地域とし、そこに昔から住んでいる住民はビザなしで行き来できるようにしたり、河川・森林・天然資源などは共同で開発・管理したりする。国境が持つ排他的なイメージを変え、両国で共有する場とするわけですね。国境問題で係争関係にある世界中の国々で、究極の解決方法として試みられてきた方法だそうです。これは良いですね。互いの面子を潰さず、緊張を緩和し、実利も得られる。というわけでここは一つ、叡智と度量を見せて領土問題を解決してほしいのですが、安倍伍長。"国益"のために領土紛争は必要だと言うのなら話は別ですが。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2015-04-03 06:34 | 北海道 | Comments(0)
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