「小倉久寛 祝還暦記念コントライブ」の際にいただいたチラシの中に、東京演劇アンサンブルによるブレヒト作「第三帝国の恐怖と貧困」公演がありました。「三文オペラ」「母アンナの子連れ従軍記」「ガリレイの生涯」を書いたベルトルト・ブレヒトの演劇は、お恥ずかしい話、実演を見たことがありません。チラシのキャッチ・コピーには"遠い昔の話ではない。遠い(昔の)国の話でもない。今。""戦争なんてまっぴらだ。戦争したいのは君だ!""オムニバス14編から浮かびあがるのは、ナチス支配下で徐々に日常を奪われ、価値観を狂わされていく庶民の姿"とあります。戦争への道をぶいぶいと突っ走る、最近とみにアドルフ・ヒトラーに似てきた安倍晋三伍長、スマホやらSNSにうつつをぬかして無関心な庶民、日本の現状を考える上で何か触発されそうな劇ですね、これは面白そうです。さっそくチケットをインターネットで購入し、芝居好きの山ノ神を誘って、観劇することにしました。
弥生好日、西武新宿線の武蔵関駅で下車し、持参した地図を頼りに公演会場の「ブレヒトの芝居小屋」に辿り着くと…ふたりして目が ・ になりました、いやほんと。まるで潰れかかった場末の町工場(失礼)。しかしちゃんと切符をもぎる方もいるし、本日は千秋楽ということなのかけっこうお客さんもいるし、一安心しました。劇場に入るとまたびっくり。ステージではなく、石畳を敷いたフロアと、それを三方から取り囲む野球場のような階段状の座席。収容人数は100人ほどでしょうか。役者の演技を至近距離で見られるわけですね、これは楽しみです。なお後でわかったのですが、この建物も舞台もすべて団員の手作りで、ここで暮らしながら演劇活動に取り組んでいるとのことです。 まずはパンフレットを参考に、東京演劇アンサンブル(TEE)を紹介しましょう。結成は1954年、都市だけで演じられている芝居を全国にもっていこう、その時代をビビッドに反映している芝居を創ろう、という思いから平均年齢20才の18人の若者たちが立ち上げました。そして同じ頃に出逢ったのがブレヒトの演劇でした。変革するものとして世界を構造的に捉えながら、細部にはこまやかなリリシズムがみちあふれるブレヒトの戯曲。衝撃を受けた彼らは、ブレヒト作品を連続上演し、劇場の名を「ブレヒトの芝居小屋」とし、劇団の名を「東京演劇アンサンブル」としました。ブレヒトが主宰した劇団の名が「ベルリーナー・アンサンブル」だったのですね。 なおベルトルト・ブレヒトについても、スーパーニッポニカ(小学館)から紹介します。 ベルトルト・ブレヒト Bertolt Brecht (1898―1956) ドイツの劇作家、演出家さて、本作は1935年から38年にかけて、亡命先のスヴェンボル(デンマーク)で、友人たちの情報や新聞記事をもとに書かれました。ナチスを批判したために弾圧を受けたブレヒトは、国会議事堂放火事件の翌日(1933年2月28日)に入院中だった病院を抜け出し、ユダヤ人であった妻のヴァイゲルと長男シュテファンを連れてドイツから脱出しました。そしてプラハ・ウィーン・チューリッヒを経由してデンマークのスヴェンボルに亡命します。この間、ナチ党政府はブレヒトの著作の刊行を禁止して焚書の対象とし、1935年には彼のドイツ市民権を剥奪しました。余談ですが、その亡命生活の悲痛を綴った彼の詩に、友人の作曲家ハンス・アイスラーが曲をつけたのが「小さなラジオに (An den kleinen Radioapparal)」です。『Melodie』というアルバムに収録されていますが素晴らしい曲です。 小さなラジオよ、亡命の間もなおアラン・レネが監督した映画『夜と霧』の音楽を担当したのもハンス・アイスラーでした。
by sabasaba13
| 2015-04-17 06:33
| 演劇
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自己紹介
東京在住。旅行と本と音楽とテニスと古い学校と灯台と近代化遺産と棚田と鯖と猫と火の見櫓と巨木を愛す。俳号は邪想庵。
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