植治の庭編(6):南禅寺界隈(13.11)

 生垣の向こうの紅葉を、指をくわえながら写真におさめ、すこし歩くと何有荘(かいうそう)の立派な門がありました。『シリーズ 京の庭の巨匠たち 2 植治』(京都通信社)には次のような記述があります。
 また「南禅寺疏水水道の下天授庵の南にあり山崕を包ねて…」と『京華林泉帖』に記された何有荘(もと稲畑勝太郎氏の「和楽庵」)の眺望景観も圧巻だ。書院の正面に滔々と流れ落ちる「瑞龍の滝」が紅葉に映える情景の素晴らしさもさることながら、上方の「草堂」に昇れば、眼下に南禅寺の山門、遥か彼方に比叡山から北山の山並み、さらには愛宕山までが一望のもとにあり、修学院離宮「隣雲亭」からの眺望に匹敵する雄大な世界がパノラマのように展開しているのである。(p.17)
 なおウィキペディアによると、このお庭は数奇な運命をたどっているようです。1953年に宝酒造の大宮庫吉が譲り受け、「何有荘」と名付けましたが、その後、宗教法人大日山法華経寺の所有となり、一般公開されたこともあったようです。2005年に居住していた社長が何有荘の売買を巡る詐欺事件で逮捕され、担保に入っていたため整理回収機構が競売を申し立てました。競売中にも関わらず、不法行為により登記事項が変更されていることが発覚。京都地裁による保全措置のため2005年から非公開となります。2006年に大阪の不動産会社「津多家」が26億3893万円で落札。2010年 には庭園を維持するため、クリスティーズの仲介により80億円にて売りに出され、オラクル社CEOである、アメリカ人実業家ラリー・エリソンが購入。どうやら一般公開はしばらく望めそうもありません。なお2013年 に維持困難との理由で、武田五一が設計した洋館が京都工芸繊維大学に寄贈され、大学キャンパスに移築されることになったそうです。これは機会を見つけてぜひ訪れたいものです。
 金地院を通り過ぎ、右に曲がるとお目当ての天授庵ですが…長い長い行列ができています。ま、これは想定内でした。前述のように、2013年のJR東海キャンペーン「そうだ京都、行こう」で取り上げられたので、黒山の人だかりです。なおキャッチ・コピーは"「今年の紅葉」を見に行く、と言いながら 「今年の自分」を見に行く私、でもありました"。馬に蹴られて死にたくないのでぐだぐだ言いませんが、そんなに簡単に企業の口車に乗っていいのですかね。縁に座って、モダンな意匠の敷石と紅葉の取り合わせを心静かに楽しみたかったのですが、潔く撤収。
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 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2015-05-26 06:13 | 京都 | Comments(0)
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