『私の東京平和散歩』

 『私の東京平和散歩』(早乙女勝元 新日本出版社)読了。散歩ってほんとにいいものですね。健康によいし、お金もあまりかからないし、環境も破壊しないし、知的好奇心も満たされるし。散歩にもいろいろなかたちがあるかと思いますが、私の場合は古い建物、史跡、戦争遺跡、近代化遺産、博物館・美術館を中心に大雑把に行程を組み立て、後は野となれ山となれ、赤子泣いても蓋とるな方式で歩きまわります。よって事前調査には力を入れたいので、気になったガイドブックはこまめに購入しています。
 本書は、東京の戦争遺跡を作家の早乙女勝元氏が紹介するというものです。早乙女氏といえば、12歳で東京大空襲を経験し、それをもとにルポルタージュの傑作『東京大空襲』(岩波新書)を著した方です。私もこれまで地元・東京の戦争遺跡はいくつか訪れました。東京砲兵工廠銃砲製造所圧磨機圧輪記念碑浅川地下壕、江戸東京たてもの園・植村邸日立航空機立川工場変電所などですが、さすがは早乙女氏、未知・未見の戦争遺跡をたくさん教示してくれました。関東大震災・東京大空襲という二度の災厄をくぐりぬけ町内の復興に尽力した在日朝鮮人・李さんが奉納した地蔵尊。東京初空襲による初めての犠牲者・石出已之助に関する資料がある葛飾区教育資料館。戦没学生の手記を展示する、わだつみのこえ記念館。ベトナム戦争に想いを馳せて描いた「焔のなかの母と子」を展示する、ちひろ美術館。広島で被爆した移動演劇連盟さくら隊を悼む原爆殉難碑(目黒・五百羅漢寺)、東京大空襲で焼け焦げた源長寺のケヤキ(足立区千住仲町)、江戸川区小松川にある焼け残った文書庫、台東区三筋に残される空襲で黒焦げた電柱、旧満洲からの引き揚げで犠牲となった母子たちの慰霊碑(浅草寺)などなど。
 また本法寺のはなし塚、上野動物園の動物慰霊碑、北の丸公園の高射砲台座など、その存在は知っていましたが訪れたことのない遺跡も紹介されていました。
 さらに麻布米軍ヘリ基地の騒音被害と事故の危険性についてふれられているのは炯眼です。私も『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部宏治 集英社インターナショナル)を読んだはじめて知ったのですが、数多くのアメリカの諜報活動機関要員が、何の妨げも受けずに日本中で活動しているのですね。その彼ら/彼女らが入ってくるドアがこのヘリポートです。米軍やCIAの関係者が何のチェックも受けずに横田基地・横須賀基地にやってきて、ヘリコプターでここに到着、そして車で五分の距離にあるのが、日米合同委員会が開かれる米軍専用のホテル兼会議場「ニューサンノー米軍センター」とアメリカ大使館です。これは必見の物件ですね。
 地図も簡にして要を得たものが載せられていますが、正確な住所が記されていないのが惜しい。また早乙女氏のコメントもたいへん参考となり、また読み物としても興味深いものでした。
 戦争が大好きな安倍伍長や石破上等兵の活躍で、戦争の腐臭が漂いはじめた昨今、かつての戦争に想像力を羽ばたかせる必要が出てきました。お散歩がてら、この本を片手に東京の戦争遺跡を歩きまわってみませんか。
 なお類書として、『保存版ガイド 日本の戦争遺跡』(戦争遺跡保存全国ネットワーク編著 平凡社新書)、『戦争のかたち』(下道基行 リトルモア)、『東京の戦争と平和を歩く』(東京都歴史教育者協議会編 平和文化)があります。
by sabasaba13 | 2015-12-28 06:28 | | Comments(0)
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