さてそろそろ時間です。お待ちかねのランチをいただくことにしましょう。邸内に戻るとテラス席に案内されましたが、ここはかつてのベランダで、ごく身内だけの食事をする場所として使用されたそうです。
前菜は「ソパ ・デ・アホ」(La Sopa de Ajo Morado)と「鮟肝のトースト」(La Tosta de Higado de Rape)。前者はにんにくの冷たいスープです。
パンにはオリーブ油をつけていただきます。
次は「菜の花とタコのハーモニー パセリクリーム 仏手柑の香り」(El Pulpo Asado con Flores de Colza, Mano de Buda y Crema de Perejil)。さまざまな味と香りが玄妙なハーモニーを奏でる逸品でした。
なお係の方が「仏手柑(ぶっしゅかん)」の現物を見せてくれましたが、まるで触手のような異形の柑橘でした。何でも千手観音に似ているところから命名されたとか。ここ山ノ神、はたと膝を打ち「これだったんだわ」とひと言。去年の夏、仁淀川に行ったときに高知で「ぶしゅ胡椒(ぶしゅかん果皮入り)」という調味料を買ったそうです。
「オマール海老 キャビア 赤米のアロスメロッソ」(El Arroz "Rojo" de Bogavante)も美味しかったですね。
「アイナメのプランチャ カボチャのピューレ カリフラワーのマリネ」(El Ainame a la Plancha, Pure de Calabaza y Coliflor Marinado)はその味もさることながら、まるでホアン・ミロの絵のような色彩も楽しめる一皿です。
そしてメイン・ディッシュは「イベリコ セクレト ソプラサーダのクレモソ レモンタイムのアクセント」(El Secreto Iberico,Cremoso de Sobrasada y Aceite de Tomillo Limonero)。こちらはスタンディング・オベーションものの逸品でした。これほど味わい深い豚肉を食べたのはじめて、これだけでも来た甲斐があったというものです。
そしてデザートは「セロリのソルベ パイナップルのアイレ モヒートのエスフェリコ」(Sorbete de Celery, Aire de Pina y Esferico de Mojito)。セロをシャーベット(ソルベ)にするなんて斬新なアイデアですね。イベリコ豚の濃厚な味を洗い流してくれる、一陣の涼風のようです。
もう一品のデザートは「柑橘のデグリネゾン」(Declinacion de Citricos)。なんと柑橘のゼリーと生クリームが、水飴で薄くかたどったレモンの中におさめられているという手の込んだ一皿です。これも美味しかったなあ。
そして「コーヒー、小菓子」(Cafe y Golosinas)をいただいて本日のランチは終了です。
いずれ劣らぬ逸品ぞろい、たいへん美味しい料理でした。なおランチコースは11:30~15:00で7,000円(税・サービス料10%別)、ディナーコースは18:00~23:00で10,000円または15,000円(税・サービス料10%別)です。10,000円のディナーには、ランチに「下仁田ネギの'カルソッツ' パパダ、ケッパーとヘーゼルナッツ」(La Cebolleta Cocida a modo de Calcots con Papada y Alcaparras)が追加されるだけだと思います、たぶん。よって個人的にはランチで充分だと思いますが、明かりに照らされた夕刻から夜の邸宅の素晴らしさも捨てがたいものがありました。
さあそれでは、オーチャード・ホールにマーラーを聴きにいきましょう。
本日の四枚は、以前に訪れたときに撮影した夕刻の小笠原伯爵邸です。