村上春樹とイラストレーター

c0051620_6315991.jpg そして、ちひろ美術館の企画展、「村上春樹とイラストレーター」を見にいきました。拙ブログで以前にも書きましたが、兄貴の本棚からたまたま『風の歌を聴け』を見つけて何気なく読んで以来、洒脱なレトリックと魅力的な物語世界に惹かれて彼の作品のファンです。以後、氏の初版本を全て購入したはずです、かなり散逸しておりますが。汗顔。
 その『風の歌を聴け』の表紙が、佐々木マキ氏の印象的なイラストでした。倉庫の建ち並ぶ波止場に座り、煙草を手にする顔のない男。空には土星、海には空き瓶。この佐々木氏をはじめとして、村上氏とコラボレイトをした四人のイラストレーター、大橋歩氏、和田誠氏、故安西水丸氏の原画を展示した企画展です。
 『風の歌を聴け』、『1973年のピンボール』、『羊をめぐる冒険』の初期3 部作の表紙を飾った佐々木マキ氏の謎めいた闊達さ。エッセイ『村上ラヂオ』を飾った大橋歩氏の銅版画のシンプルで寡黙な線の魅力。"村上朝日堂"シリーズをはじめ、最も多くコンビを組んだ故安西水丸氏の軽妙洒脱な遊び心。そして『村上ソングズ』や『ポートレート・イン・ジャズ』などで、音楽への愛情を共有しながら素晴らしいデュエットを奏でた和田誠氏。いずれも劣らぬ魅力的な絵に見入って時を忘れました。関連する文章の掲示や制作技法の紹介、すぐそばに実際の本を置かれて手に取れるなどといった展示の工夫もいいですね。
 中でも私が好きだったのは『ポートレート・イン・ジャズ』を飾った三枚の絵、ジミー・ラッシングとアート・ペッパーとギル・エバンスです。彼らの音楽が聴こえてくるような滋味にあふれた和田氏の絵と、リズムに乗った村上氏の文章の見事なコラボレーション。また読み返したくなりました。
 というわけで、ちひろ美術館と本展、一粒で二度美味しい幸せな時間を過ごせました。なお会期中に、絵本カフェにて『風の歌を聴け』に登場する鼠の好物「ホットケーキのコカコーラがけ」がいただけるそうですが、うむむ、これはパスしました。

 蛇足ですが、拙ブログで紹介した『小澤征爾さんと、音楽について話をする』、『雑文集』、『1Q84』、『走ることについて語るときに僕の語ること』、『村上ソングズ』、『意味がなければスイングはない』の書評も、よろしければご笑覧ください。
by sabasaba13 | 2016-07-21 06:32 | 美術 | Comments(0)
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