京都錦秋編(30):妙心寺退蔵院(14.11)

 方丈の隣りにあるのが「元信の庭」、室町時代の絵師・狩野元信の手による枯山水庭園です。元信が画家としてもっとも円熟した70歳頃の築庭と推測され、自分の描いた絵をもう一度立体的に表現しなおしたもので、しかも彼の最後の作品だそうです。『一度は行ってみたい京都「絶景庭園」』(烏賀谷百合 光文社知恵の森文庫)によると、中根金作はこう評しています。
 …その雄渾なるうちに優雅豊麗さのある手法で石組し、作庭された構成の見事さには驚くべきものがある。そしてそれはあくまでも絵画的である。庭全体の構成や石組の一つ一つにも、画家でなくしてはなし得ない感覚がみられ、この庭の作庭者がただ者でないことを容易にうなずかしめるのである。(p.232)
 それでは余香苑へと向かいましょう。途中にあった瓦には、瓢箪と鯰が刻まれていました。
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 「陰陽の庭」を過ぎると、眼前に紅枝垂れ桜が現れました。平安神宮にある紅枝垂れ桜の孫桜で樹齢約50年。2013年春の「そうだ、京都いこう」キャンペーンに使用されたそうです。これはぜひ満開の頃に見てみたいものです。
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 楓の数はそれほど多くはないのですが、見事に色づいた紅葉をいくつか見られたのは僥倖でした。これは経験則なのですが、便所の近くの楓が特に綺麗なようです。"桜の樹の下には屍体が埋まっている"と書いたのは梶井基次郎ですが、"モミジの樹の下には…" 尾籠な話で御免なさい。お茶席「大休庵」の窓も瓢箪でした。
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 そして余香苑(よこうえん)へ。小さな塔頭かと思いきや、これほど宏大なお庭が広がっていることに驚かされます。サツキの大刈り込みの間から三段落の滝が、大きな池へと流れ落ちてきます。石組、石橋、灯籠、東屋などがバランスよく配置され、まるで一幅の絵を見るよう。観光客も少ないので、閑寂とした雰囲気の中で堪能することができました。視線の快楽… 心がどんどん広がって石や木々や水と一体になっていくような見事なお庭です。最上部に先ほどの紅枝垂れ桜が見えますが、満開の頃は絶景でしょうね。
 作庭したのは"昭和の小堀遠州"こと中根金作(1917~95)。静岡県磐田郡に生まれ、浜松工業学校図案科を卒業後、日本形染株式会社に入社。捺染図案の作成を行ないますが、二年後に退社し、現在の東京農業大学造園学科に入学しました。その後京都に移り、文化財保護課で働いた後、1966年に中根庭園研究所を開設し、作庭と庭園研究に専念します。代表作は、足立美術館、昭南宮などです。これからも追いかけ続けていきたい庭師です。
 なおこのお庭は、米国の庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」(JOJG)が発表する2015年の「日本庭園ランキング」の第31位に選定されています。"So what"と(以下略)

 本日の五枚、一番上が「元信の庭」、真ん中三枚が余香苑、一番下が「陰陽の庭」です。
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by sabasaba13 | 2016-10-15 06:29 | 京都 | Comments(0)
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