「ナショナリズム」

 「ナショナリズム」(浅羽通明 ちくま新書473)読了。ナショナリズムという文字を本屋で見かけるとついつい手にしてしまう今日この頃。この本は十冊のテキストをもとに、近現代日本のナショナリズムを考察したものですが、その選択が個性的ですね。志賀重昂、三宅雪嶺、橋川文三、小熊英二は定石ですが、石光真清、金田一春彦の「日本の唱歌」、本宮ひろ志の「男一匹ガキ大将」、司馬遼太郎の「坂の上の雲」については意表をつかれました。その手があったか! ナショナリズムを、ネイション=「国」=日本に価値を認め、そこに基底をおいて展開される社会思想と定義した上で、快刀乱麻、切れ味鋭い分析と叙述がなされていきます。通奏低音となるのは、ナショナリズムは病気だとする姜尚中氏に対して、ナショナリズムは薬・補助具であるという考えです。ある病状へ陥った人もしくは集団が需要する対症療法であり、効果的なこともあれば、中毒や依存症となることもある。なるほどこれは上手い比喩ですね、納得してしまう。
 また近代日本についての以下の説明にはまいりましたね。わずか数行で、その本質を要約してしまう力業には敬服します。
 体裁を繕ういとまもない試行錯誤の末、かろうじて出来上がり、なんとか成功したこのシステム…、明治国家日本。いきなり競技参加を強制され、じたばたと脂汗を流した末、まぐれ当たりで合格できたかのごとき格好悪さを隠蔽したい…。こうしたシステムでまとまるやり方に千数百年来の必然があったのだと思いこむためには、我らの「国語」が「国史」が「国文学」が、万世一系の皇室が、どうしても必要だったのである。
 またナショナリズム関連文献を紹介する各章末の読書ノートも充実しており、的確な要約と視点の幅広さにより大変参考となります。さっそく数冊購入してしまった。ナショナリズムを考える上で大変役立つ一冊です。
by sabasaba13 | 2005-09-03 09:59 | | Comments(0)
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