近江編(23):桂離宮(15.3)

 参観者出入口に至るまでの竹の垣根も、繊細な意匠の見事なものですが、桂穂垣というそうです。表門は竹でしつらえた質素な門ですが、閉ざされていてここからは入れません。そして午前九時すこし前に待機場所に到着、参観許可証を提示して参観者休所で待つことになります。参観は無料、これは嬉しいですね。
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 なお『芸術新潮』(2000.7)に掲載された、橋本治氏による「桂離宮の歩き方」がたいへん参考となりました。また井上章一氏による『つくられた桂離宮神話』(講談社学術文庫)もなかなか面白いですよ。ブルーノ・タウトに始まる桂離宮の神格化が、戦時体制の進行にともなうナショナリズムの高揚と、建築界のモダニズム運動の勃興を背景に、周到に仕組まれた虚構であったことを実証する、知的興奮に満ちた本でした。ちなみに、ブルーノ・タウトは『日本美の再発見』(岩波新書)の中で、次のように東照宮をこき下ろし、桂離宮を賞揚しています。
 桂離宮は、およそ文化を有する世界に冠絶した唯一の奇蹟である。パルテノンにおけるよりも、ゴシックの大聖堂あるいは伊勢神宮におけるよりも、ここにははるかに著しく「永遠の美」が開顕せられている。…これ以上の簡素を求めることは不可能である。…これ以上単純でしかも同時にこれ以上優雅であることは、まったく不可能である。
 専制者芸術の極致は日光廟である。ここには伊勢神宮に見られる純粋な構造もなければ、最高度の明澄さもない。材料の清浄もなければ、釣合の美しさもない、-およそ建築を意味するものはひとつもないのである。そしてこの建築の欠如に代るところのものは、過度の装飾と浮華の美だけである。
 虚心坦懐、できるだけ先入観を排して、自分の眼を信じて桂離宮を楽しみたいと思います。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2017-08-20 07:11 | 近畿 | Comments(0)
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