『週刊金曜日』

 安倍上等兵内閣が犯した大罪は山ほどありますが、見逃せないのがメディアに対する圧力です。『誰がこの国を動かしているのか』(鳩山友紀夫・白井聡・木村朗 詩想社新書12)から引用します。
 特に深刻なのは、政府・官邸による恐るべき言論統制と情報操作であり、その結果、マスコミの自主規制と世論の委縮、集団同調圧力の高まりと一般市民の沈黙・無関心・思考停止が急速に広がっています。「国境なき記者団」の世界報道自由度ランキングで日本の報道評価が民主党政権時の11位(2010年)から、22位、53位、59位、61位(2015年)、72位(2016年)と毎年下がり続けているのはその反映だと思います。2016年4月11日に訪日した「表現の自由」に関する国連特別報告書であるデービッド・ケイ氏(米国)の「日本の報道の独立性は重大な脅威に直面している」、「特定秘密保護法や、『中立性』『公平性』を求める政府の圧力がメディアの自己検閲を生み出している」という発言にも注目する必要があると思います。(p.310~1)
 メディアの役割は"中立で公平な報道"ではなく、"権力の監視"であることを、関係諸氏は今一度肝に銘じていただきたいと思います。しかし媚びず、腰を引かず、権力を監視し舌鋒鋭く批判するメディアがあるのも事実。そうしたメディアを激励し、身銭を切って支援するつもりです。今、定期購読しているのは『DAYS JAPAN』と『しんぶん赤旗』、いずれも硬骨・反骨の信頼できるメディアです。ただ前者は月刊誌で世界の動きが中心、後者はどうしても日本共産党の視点が強い、ということで少々物足りなさを感じていました。そこで三角測量ではありませんが、もうひとつ『週刊金曜日』を定期購読することにしました。
 公式サイトから、誌名の由来がわかりました。反ファシズムのフランス人民戦線が刊行した『Vendredi(ヴァンドルディ=金曜日)』。それに刺激され、治安維持法制下の京都で発刊されるも弾圧により途絶した『土曜日』。戦後日本の民主主義を支え、34年を積み重ねたが部数の低迷により廃刊した『朝日ジャーナル』。この三誌の志を継承し、さらに発展させるものとして、哲学者・久野収が『週刊金曜日』と命名されたそうです。
 同サイトには「創刊のことば」(1993.7.23)も紹介されていたので、引用します。
 歴史学者J・E・アクトンの有名なことば「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」に象徴されますように、権力の腐敗がほとんど法則的であることを前提として、近代の国家は腐敗を構造的に防ぐ手段たる「三権分立」を創出しました。しかしこの三権はいずれも国家権力に属するために、しばしば癒着あるいは独裁化に陥りやすい現象がみられます。
 この「癒着あるいは独裁化」を監視して未然に防ぐための最も有効な働きを示してきたのがジャーナリズムです。腐敗しつつある権力は、国民に「知られる」ことをまず最もおそれます。知られなければ国民の怒りも起きようがないはずなのですから。したがってジャーナリズムは、国家権力としての「三権」からは全く独立した市民のものでなければならず、そこに俗称「第四権力」たる意味も役割もあるわけです。民主主義社会にとって健全なジャーナリズムが必須条件でもあるゆえんでしょう。(中略)
 ジャーナリズムが国民の信頼を失うもう一つの大きな原因に、国家権力との癒着あるいは国家権力の広報機関化があります。三権を監視する役割のはずが、三権の補完物と化しているのでは、第四権力としての存在理由もなくなってしまいます。(後略)
 その意気やよし。定期購読料を払う読者が主たるスポンサーなので、企業や政官権力に遠慮することなく、その圧力にも屈せず、権力を監視することができるのですね。ようがす、その一翼を担いましょう。

 編集委員は、雨宮処凛、石坂啓、宇都宮健児、落合恵子、佐高信、田中優子、中島岳志、本多勝一の諸氏、いずれも一家言のある手練れの皆様です。半数が女性であることに注目しましょう、誌の見識を感じます。ちなみに「世界の中の日本を知る 世界ランキング」によると、日本の国会の女性議員割合は11.60%で、世界ランキングの順位は147位だそうです。
 これまで三冊を拝読しましたが、権力に阿らず、怯えず、遠慮せず、一般市民の目線で言うべきことを言うという姿勢が感じられる記事がほとんどです。1156号(2017.10.13)に掲載された編集部・成澤宗男氏の『脅威を煽るだけの「ミサイル非難訓練」』という記事を紹介しましょう。例のあの鬱陶しい"Jアラート"というしろものですね。もし北朝鮮が日本をミサイル攻撃するとしたら、その優先順位として在日米軍基地と首相官邸・防衛省でしょう。ところが成澤氏によると、米軍基地を抱えた自治体および東京の千代田区・新宿区のなかで、「ミサイル非難訓練」を実施したのは岩国市内の通津(つづ)小学校ただひとつ。しかも基地から10km以上も離れているそうです。本当に差し迫った危険があるのならば、こうした地域での避難訓練を強制してでもやらせるのが政府に責務なのに、何もしない。ということは…安倍上等兵内閣は、北朝鮮によるミサイル攻撃はあり得ないと考えているわけですね。それでは何故、氏曰く…
 …住民を思考停止にして「ミサイルの恐怖」を植え付け、北朝鮮への敵愾心を煽れば、権力基盤の強化になるという、首相の計算があるに違いない。選挙公約の北朝鮮政策では「圧力強化」しか言わず、米日を除く世界の大半の国が求めている対話路線を無視しているのも、「脅威」を利用するにはそちらの方が好都合だからだ。(p.33)
 ったく、オスプレイの方がよほど危険なのだから、"Oアラート"を鳴らすべきだと思いますけれどね。

 安倍上等兵内閣が権力基盤を強化するために、北朝鮮の脅威を煽っているとすれば、宗主国であるアメリカ・トランプ政権の意図は何か。同号で、孫崎享氏が、毎日新聞(17.9.26 ネット版)の報道を紹介されています。
 「北朝鮮特需」に沸く米軍軍産複合体、米上院 政府案を600億ドルも上回る国防権限法案を可決 米国防産業が"北朝鮮特需"に沸いている。米上院は今月18日、2018会計年度の国防予算の大枠を決める国防権限法案を89対9の圧倒的な賛成多数で可決。予算規模は総額約7000億ドル(約77兆円)で、政府案を約600億ドルも上回った。北朝鮮が開発を急ぐ核・弾道ミサイルに備える予算などが上積みされた。主要軍事産業の株価も上伸を続け、「軍産複合体が北朝鮮情勢の『恩恵』を受けている」との声も出ている。(p.23)
 こうした複合的かつ冷静な視点で、安倍上等兵の言う"国難"を考えると、事態のもつ意味が見えてきます。これこそが「第四の権力」、メディアの役割ですね。これからも末永く支え続けていきたいと思います。

 他にも、市民運動から講演・映画・音楽イベントの情報を案内する「きんようびのはらっぱで」や、読書会の紹介なども良い企画ですね。後日、拙ブログで紹介しますが、書評・音楽評・映画評も充実しています。ビル・エヴァンスの『アナザー・タイム』や中川五郎の『トーキング烏山神社の椎ノ木ブルース』、映画『エルネスト』、「慰安婦」写真展『重重 消せない痕跡Ⅱ』などにめぐり合わせてもらいました。感謝します。
by sabasaba13 | 2017-10-18 06:28 | | Comments(0)
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