『エルネスト』

『エルネスト』_c0051620_627195.jpg 先日、山ノ神と「ユナイテッドシネマとしまえん」で、映画『エルネスト』を見てきました。『週刊金曜日』の映画評で知ったもので、チェ・ゲバラのもとで戦った日系人を主人公とした映画だそうです。ゲバラを描いた映画、『チェ 28歳の革命』と『チェ 39歳別れの手紙』を見て、"人が人を搾取することは許せない"という彼の志にいたく感銘を受けました。その彼とともに戦った日系人がいたとは初耳です。これは楽しみですね。監督は阪本順治、主演はオダギリジョーです。

 公式サイトをもとに、私の文責でストーリーを紹介します。1959年7月24日、日本を訪問していたエルネスト・チェ・ゲバラ(ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ)らが急遽、広島へ向かいます。唯一。中国新聞社・森記者(永山絢斗)だけが取材に同行。ゲバラは、原爆ドームや原爆資料館などを訪れ、こう感想を述べるのでした。「君たちは、アメリカにこんなひどい目に遭わされて、どうして怒らないんだ」と。
 それから数年後の1962年4月、ひとりの日系人青年、フレディ前村(オダギリジョー)が、祖国ボリビアのために医者になることを決意し、ハバナ大学の医学部にやってきました。1963年の元旦に憧れのゲバラが学校にやってきて、フレディと話します。「あなたの絶対的自信はどこから?」と訊くフレディに対してゲバラはこう答えました。「自信とかではなく怒っているんだ、いつも。怒りは、憎しみとは違う。憎しみから始まる戦いは勝てない」。そんな矢先、母国ボリビアで軍事クーデターが起こり、フレディは『革命支援隊』に加わることを決意します。ある日、司令官室に呼ばれたフレディは、ゲバラから戦地での戦士ネームである"エルネスト・メディコ(医者)"という名を授けられ、ボリビアでの戦いへと向かうのでした。

 ほんとうに真面目でまっすぐな映画でした。貧しい人びとのために医学への道を志し、さらには搾取や暴力や貧困をなくすために革命への道を突き進む、愚直なまでに一途なフレディ前村を、オダギリジョーが熱演しています。なかでも心に残ったのが、「見果てぬ夢を見て何が悪い」というセリフです。そういえば、夢を見ること、夢を語ることが、私たちの社会では縁遠くなったような気がします。話題といえば"今だけ、金だけ、自分だけ"、スマホとコンビニとユニクロがあればとりあえず満足といった風潮をそこはかとなく感じます。こういう時代であればこそ、フレディのように、より真っ当な社会をつくろうという夢を臆せずに見たいものです。夢は見ていいんだという勇気を分けてくれた映画でした。そういえば、ゲバラもこう言っていましたっけ。
 もしわれわれが空想家のようだといわれるならば、救いがたい理想主義者だといわれるならば、できもしないことを考えているといわれるならば、何千回でも答えよう、そのとおりだ、と。
 もうひとつ印象的だったのが、広島の平和記念公園と原爆病院を訪れたゲバラの真摯な表情です。映画が進行するにつれ、当時のキューバではアメリカによる核攻撃の可能性を視野に入れていたことがわかりました。核兵器の威力と後遺症を医者の目で冷徹に分析するとともに、この非人道的な兵器と、それを利用してエゴイスティックに権益を追及する超大国への怒りを覚えたことと思います。怒りから始まる戦いは勝てる。核兵器禁止条約に反対する日本政府に怒りましょう。
by sabasaba13 | 2017-11-11 06:28 | 映画 | Comments(0)
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