「フォトジャーナリスト13人の目」

 「フォトジャーナリスト13人の目」(日本ビジュアル・ジャーナリスト協会編 集英社新書0303A)読了。今、世界で何が起きているのかをありのままに伝えてくれる万人必読の書です。日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)は、9.11以降のメディアの危機的状況を背景に結成されたビジュアル・ジャーナリストの集まりです。人間の生命と尊厳を守ろうと責任のある仕事をし、取材する自由と報道する権利を守るために協力して不測の事態に対処し、ジャーナリストとしてお互いを鍛えあうことを設立の目的としています。
 イスラエル軍による占領と暴力に脅かされるパレスチナ人、石油・ダイヤモンドの利権をめぐる内戦で荒廃したアンゴラ、外部の人間を全て敵と見なし「刑務所国家」となることを自ら選んだアメリカ、地球上から消されかかっているチェチェン人、劣化ウラン弾に汚染されるイラク、ゴミ捨て場で暮らすカンボジアの子供たち、地雷で両足をうしなったアフガニスタンの子供たち、アメリカ軍が散布したダイオキシンの後遺症に苦しむベトナム、殺戮・略奪をくりかえすリベリアの子供兵士、混乱と貧しさのなかに打ち捨てられてきたハイチ… 目を背けるのはやめましょう、これが今の世界です。暴力・虐殺・差別・占領・信じ難い貧富の差、そして何よりも最も弱い立場にある子供たちへの虐待。
 天然資源や武器や経済支援といった利権を、グローバル企業・各国政府が無秩序に住民の人権を無視して追い求めてきた結果でしょう。思うに、こうした現象は人類の歴史とともに連綿と続いてきました。「人権」という言葉が多少でも根付いたのは、第二次大戦後の数十年間、ほんの一握りの先進国のみであったと思います。様々な問題や矛盾を第三世界に押し付け、見えないようにフタをし、豊かさと人権を享受してきたのが大戦後の(日本を含めて)先進国の人たちでした。しかし科学技術の進歩とグローバリゼーションの進展により、貧富の差は絶望的なものとなりました。そうした事態の根本的原因はアメリカ政府の政策にあると考えた人々の反撃が9.11だと思います。9.11のもつ意味というのは、科学技術の進歩によって、民衆の無差別虐殺という事態が先進国でも起こりうるということを示したことです。9.11によって世界は何も変わっていません、これまで別世界にいた先進国が現実の世界に引き戻されただけです。ようこそ、真実の世界へ!
 もっとも衝撃を受けたのが土井敏邦氏の一文です。
 2004年春に起こった米軍によるイラクのファルージャ侵攻と、イスラエル軍によるガザ地区(パレスチナ自治区)ラファ侵攻の双方の現場に、驚くほど共通する点がある。一つは、侵攻した軍の狙撃兵が「動くものは何でも撃つ」ことだ。銃の照準眼鏡で相手が子どもや女性であることを判定できていても、まるで猟を楽しむかのように撃ち殺している。そしてもう一つは、救急車の救助活動の妨害だ。ファルージャでは救急車の運転手が射殺され、私が確認しただけでも二台の救急車が砲撃で丸焼けにされていた。
 これは、意図的に人々の憎悪を煽り立てる戦略ではないのか。結果として、テロリストが増え、テロリズムが世界に蔓延する状況となるはずです。それによって利益を受けるのは誰か。軍需産業であり、治安対策を強化して国内や世界を思うがままにコントロールできるようになるアメリカ政府でしょう。テロリズムの猖獗をもっとも望んでいるのは彼らではないのか。
 そしてその外交に全面的に随従しているのが、わが小泉自民党政権です。アメリカ政府が行ってきた/行っている国家テロと、それに対抗するテロ、その双方を地球上からなくすためにわれわれは何をすべきか。それを本気で考える上でも、格好の入門書です。ホワイトバンドを買う前に、まずこの本を読んでほしいな。

 絶望の虚妄なること まさに希望に相同じい
                    ~ペテーフィ・シャンドル~

 私に出来る限りのことを
        ~ヤン・ファン・エイク~

●JVJA http://www.jvja.net
by sabasaba13 | 2005-10-15 07:42 | | Comments(0)
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