『ロダン』

c0051620_76150.jpg 『CODA』を「角川シネマ有楽町」で見たときに、『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』という映画のチラシが置いてありました。天才彫刻家オーギュスト・ロダンを描いた映画ですね。カミーユとは、カミーユ・クローデルのことでしょう。ロダンの高弟にして愛人、そしてロダンを凌駕する才能をもった彫刻家にして、彼との間のさまざまな確執を経て悲劇的な最期をとげた女性。「ウィキペディア」にはこうありました。
 この悩める時期に教え子のカミーユ・クローデルと出会い、この若き才能と魅力に夢中になった。だが優柔不断なロダンは、カミーユと妻ローズの間で絶えず揺れた。数年後ローズが病に倒れ、カミーユがローズと自分との選択を突付けるまで決断できなかった。ロダンはローズの元に逃げ帰り、ショックを受けたカミーユは以後、徐々に精神のバランスを欠き、ついには精神病院に入院、死ぬまでそこで過ごすことになる。
 これは面白そうな映画です。さっそく山ノ神を誘って東劇に見に行きました。都営地下鉄浅草線の東銀座駅でおりて地上へでると、すぐ目の前が歌舞伎座です。ここから東へ数分歩くと東劇に到着です。監督はジャック・ドワイヨン、公式サイトから、あらすじを引用します。
 1880年パリ。彫刻家オーギュスト・ロダンは40歳にしてようやく国から注文を受ける。そのとき制作したのが、後に《接吻》や《考える人》と並び彼の代表作となる《地獄の門》である。その頃、内妻ローズと暮らしていたオーギュストは、弟子入りを願う若いカミーユ・クローデルと出会う。
 才能溢れるカミーユに魅せられた彼は、すぐに彼女を自分の助手とし、そして愛人とした。その後10年に渡って、二人は情熱的に愛し合い、お互いを尊敬しつつも複雑な関係が続く。二人の関係が破局を迎えると、ロダンは創作活動にのめり込んでいく。感覚的欲望を呼び起こす彼の作品には賛否両論が巻き起こり…。
 この映画は二つの観点が貫かれています。ロダンの創造活動と、カミーユ・クローデルとの愛憎。「創った。愛した。それが人生だった」というサブタイトルが示す通りです。
 まずは何といっても、主役のヴァンサン・ランドンの演技には舌を巻きました。もちろんご本人にはお会いしたことはないのですが、風貌、仕草、言動、すべてがロダンに生き写しのように思えます。彫刻家の創作現場の様子もよくわかりました。そして、己の芸術に対する信念を枉げず、周囲の無理解に抗い、製作を続けるロダンの姿勢もよく描かれています。「カレーの市民」や「地獄の門」といったおなじみの名作も随所に登場します。そして圧巻は、「バルザック像」の製作過程です。箱根彫刻の森美術館のサイトから転記します。
 ロダンは文芸家協会から、小説家オノレ・ド・バルザック(1799-1850)の記念像の制作を依頼され、肖像写真をもとにして制作した。1898年のサロンにガウンをまとった石膏像を発表したが、これが雪だるま、溶岩、異教神などと言われ、「フランスが誇る偉大な作家を侮辱した」と、協会から作品の引き取りを拒否された。ロダンは石膏像を引き取り、終生外に出さなかった。彼の死後、1939年になってパリ市内に設置、除幕された。ガウンによって写実的なディテールが覆われ、大胆に要約された形態は、ロダンの作品の中でも最も現代に通じるものである。
 バルザックという巨大な作家の本質を表現するために、ビア樽のような腹とペニスを晒して腕を組む裸体像を造形するロダン。それに対する囂々たる非難と悪罵。苦悩しながらもとてつもない方法でクリアしますが、それは見てのお楽しみ。創作行為の現場に立ち会えたような、スリリングな場面でした。

 ロダンとカミーユの関係もうまく描かれていました。女性遍歴をくりかえしながらも妻ローズを愛おしむロダン。優柔不断な彼に苛立つ、誇り高い女性カミーユ。己の才能に自信をもつ彼女はロダンと別れて独立しますが、そこで待っていたのは女性差別でした。ただ女性というだけで作品が評価されない現実の前に、彼女は苦悩します。カミーユの作品、両手を伸ばして救いを求めるような「嘆願する女」を見て、顔色を曇らせるロダン。「彼女は脅威だ」という一言も重いですね。ロダンを悪者にして済ませるような単純な解釈ではなく、二人の関係の陰影をみごとに表現していました。

 味わい深く余韻の残る、良い映画でした。お薦めです。

 なお日本人モデルの花子が映画に登場します。パンフレットで知ったのですが、森?外に、彼女をモチーフにした『花子』という作品があるのですね。勉強になりました。
 また静岡県立美術館には、彼の作品を集めたロダン館があります。一見の価値あり。
by sabasaba13 | 2018-01-06 07:06 | 映画 | Comments(1)
Commented at 2018-01-12 17:01 x
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