もうひとつ。格差社会による不安とストレス、そこから逃避するための集団への埋没と弱者への差別・迫害は日本だけの減少ではないということです。世界史から学ぶことも重要ですね。いくつか例を挙げましょう。
『人生と運命』(ワシーリー・グロスマン みすず書房)そして今、トランプ政権の誕生やヨーロッパにおける極右勢力の伸長が物語っているように、格差社会による不安とストレス、そこから逃避するための集団への埋没と弱者への差別・迫害が、世界的な現象になっています。テロリズムと難民の増加も、国際的な格差の広がりと絶望的な貧困という視点から理解できると思います。『丘の上のバカ ぼくらの民主主義なんだぜ2』(高橋源一郎 朝日新書594)の中に次の一文がありました。 パリ同時多発テロが起こった後、ツィッターに、次のことばを大きく刻みつけた人がいるのを見つけた。…こんな世界に、こんな日本にしてしまった真の原因を考えようと呼びかける小さな声、その声にハーモニーの不協和音として唱和しましょう。pray, and think. それでは最後に、ふたたび映画『ハンナ・アーレント』から引用して、キーボードを叩くのを終えようと思います。長い期間でしたが、ご通読していただきありがとうございました。 ソクラテスやプラトン以来、私たちは"思考"をこう考えます。自分自身との静かな対話だと。人間であることを拒否したアイヒマンは、人間の大切な質を放棄しました。それは思考する能力です。その結果、モラルまで判断不能となりました。思考ができなくなると、平凡な人間が残虐行為に走るのです。過去に例がないほど大規模な悪事をね。私は実際、この問題を哲学的に考えました。"思考の風"がもたらすのは、知識ではありません。善悪を区別する能力であり、美醜を見分ける力です。私が望むのは、考えることで人間が強くなることです。危機的状況にあっても、考え抜くことで破滅に至らぬよう。
by sabasaba13
| 2018-01-15 07:45
| 関東大震災と虐殺
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Comments(4)
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ちび
at 2018-03-28 20:05
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今回は、関東大震災の貴重な記事を読むことができました。
その中で、金子文子も知ることもできました。 ありがとうございました。 でも桜の記事も非常によかったのです。 それで、場違いなコメントをしてしまいました。 「理解と思考」 情報の獲得・解析と深い内省 やはり、これしかないのでしょうね。
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sabasaba13 at 2019-02-06 21:32
こんばんは、ちびさん。コメントが遅れてたいへん申し訳ありませんでした。ご海容ください。
過分なお褒めの言葉をいただき恐縮です。過ちを犯したことのない国家などありません。問題はその過ちを認めて二度とくり返すまいと努力するのか、あるいはそれから目を逸らし、誤魔化し、忘れ、無知・無関心となるのかの違いでしょう。後者の国は過ちを繰り返します、間違いなく。そういう思いをもって書いた連作です。 金子文子には『何が私をこうさせたか』という獄中手記があります。購入したものの未読なので、近々読んでみようと思います。 桜の開花ももうすぐですね。今年は、白石、角館、吉野、原谷苑(京都)に行きたいなと、山ノ神と手ぐすねを引いています。
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穢土
at 2019-07-30 09:59
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その過ちとやらは誰がどうやって定義するのだろうか、被害者は絶対正義であり彼ら側には何の落ち度もない無垢な天使のような存在だったのだろうか。
加害者側は一切反論や証明を求めることをせず被害者側が望むままに何でも言うことを聞き財産を差し出すべきなのだろうか。 集団同士の歴史において、加害者側も被害者側も当事者ではなくなってもその絶対的な力関係は維持されるべきなのだろうか。 謝罪や賠償を求める側も同じ人間だからこそ、悪意をもって誇張し利用しようとする可能性を考えそれから今自分が持っている財産を守ろうとするのは当然ではないのだろうか。
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sabasaba13 at 2019-08-13 21:33
こんばんは、穢土さん。コメントをありがとうございました。私の考えはシンプルで、加害者は被害者に対して謝罪をして賠償をすべきであるということです。ただ、具体的にどのような謝罪や賠償をするのかについては、その加害行為をきちんと調べたうえで、被害者の意向を汲みながら話し合って決めるべきだと考えます。しかし残念ながらこの事件に関しては、「関東大震災と虐殺 40」https://sabasaba13.exblog.jp/28357575/を読んでいただければわかるように、日本政府による公的な調査、謝罪と補償はいまだなされていません。まずは議論の前提となる公的な調査を行うこと、それはほとんどの当事者が亡くなったいま、私たちの果たすべき責務ではないでしょうか。「そんな昔のことは分からない」「私たちには関係ない」「もう忘れよう」と開き直るのなら話は別ですが。
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自己紹介
東京在住。旅行と本と音楽とテニスと古い学校と灯台と近代化遺産と棚田と鯖と猫と火の見櫓と巨木を愛す。俳号は邪想庵。
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