『おだやかな革命』

c0051620_14233095.jpg 山ノ神がインフルエンザにかかって寝込んでしまいました。しかも花粉症との二重苦、甲斐甲斐しく…でもありませんが、ま、それなりに看病してやっと小康状態となりました。よかった。実はどうしても見たい映画が二本あるのですが、仕事の関係でこの日にしか見に行けません。彼女も快く承諾してくれたので、無情ですが一人で梯子をすることにしました。すまん。許してくれ。
 その二本とは、ポレポレ東中野で上映されている『おだやかな革命』と、岩波ホールで上映されている『花咲くころ』です。まずは都営地下鉄12号線に乗って、東中野駅で下車。地上に出てちょっと歩くと、すぐポレポレ東中野に到着。公式サイトから引用します。
 原発事故後に福島県の酒蔵の当主が立ち上げた会津電力。放射能汚染によって居住制限区域となった飯館村で畜産農家が立ち上げた飯館電力。岐阜県郡上市の石徹白、集落存続のために100世帯全戸が出資した小水力発電。さらに首都圏の消費者と地方の農家、食品加工業者が連携して進めている秋田県にかほ市の市民風車。自主自立を目指し、森林資源を生かしたビジネスを立ち上げる岡山県西粟倉村の取り組み、都市生活者、地方への移住者、被災者、それぞれのエネルギー自治を目指すことで、お金やモノだけでない、生きがい、喜びに満ちた暮らしの風景が生まれている。成長・拡大を続けてきた現代社会が見失った、これからの時代の「豊かさ」を静かに問いかける物語。
 パンフレットの巻頭にある、渡辺智史監督の言葉も引用します。
 今の日本社会が抱えている様々な矛盾は、一見すると解決が困難にも思えることばかりです。でもそれらが意外にも「暮らしの選択」という身近なキーワードから解決していけるのではないか、そこにこそ確かな希望があるのではないかと思うのです。本映画には自らの手で仕事や暮らしを作っていく人々が手を携えながら、新しい時代を切り開いていこうとする姿が描かれています。その先には、これまでの拡大・成長を追い求めてきた時代が見失った「本当の豊かさ」が見えてくるはずです。ワクワクや共感によって動く新しい時代は、もう始まっています。この映画の上映を通して、全国各地で皆さんと一緒に「おだやかな革命」の動きを作っていきたいと思います。
 過疎に悩む僻地の町や村を描いた、ほんとうに地味な、地味な映画です。そこに生き暮らしている人たちは、何とかしてふるさとを維持し、子孫に残そうと必死に思い悩みます。思うに、ひとつの選択肢として国家や資本に依存するという道があるかと思います。核(原子力)発電や軍事基地など「迷惑施設」を受け入れて国家の経済的援助に頼る、あるいは企業を誘致して資本に頼る。しかしこの道がいかに危険と背中合わせなものかは、福島や水俣が例証しています。この映画に登場する地域は、そうした安易で危険な選択肢は選びません。経済発展や経済成長を求めず、自然再生エネルギーで地域の需要を賄いながら、みんなで手を取り合って、生きるための生業を見つけ出し、つくりあげていく。国家や資本にふりまわされることなく、弊履の如く捨てられることなく、ふるさとと自然を子孫に伝え残すためですね。みんなでお金を出し合い、協力して水車や小さな水力発電を設置する、地域に合った食材をつくり調理して提供する、伝統的な作業着をファッションとして再生する、付近の山林でとれる木々で家具や楽器をつくる。さまざまな取り組みが映像を通して伝えられます。いちばん心に残ったのは、みなさんの仲が良いこと、そしてその表情が明るく楽しそうだということです。考えてみれば、経済成長というのは、究極のところ、「今だけ、金だけ、自分だけ」ということでしょう。お金以外の価値を認めず、未来と他者を犠牲にして、富を奪い合う。それに対してこの映画に登場する人たちは、富を分かち合い、未来と他者のために働き工夫し努力する。みんなの喜びは私の喜び、私の幸せはみんなの幸せ、♪When you're smilin' When you're smilin' The whole world smiles with you♪ 見ているうちに微笑みがこぼれてくるような、素晴らしい映画でした。お薦めです。

 なお、タイトルにある"革命"というのは少し大仰ではないのかな、と思いましたがさにあらず。映画の見た後にたまたま読んだ『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(水野和夫 集英社新書0883)によって蒙を啓かれ、こうした町や村の試みは"革命"に値するものだとあらためて感銘を受けました。水野氏の分析を紹介しましょう。13世紀初頭に始まった資本主義が、いま、終焉を迎えています。利潤をもたらしてくれるフロンティアを求めるために地球の隅々にまでグローバリゼーションを加速させてきた結果、地球が有限である故、その臨界点に達し、膨張が収縮に反転しているのが現在です。この危機において、資本は、わずかでも利潤を得るためになりふりかまわぬ暴走を始めています。大は内外両面で猖獗を極める格差と貧困、小はデータをごまかしてまで安倍政権と財界が成立させようとした裁量労働制、いずれも資本主義の断末魔の叫びでしょう。
 それではこれからどうすればよいのか。水野氏は、成長至上主義と決別し、定常状態(ゼロ成長)への移行を遂げねばならないと主張されます。そのためにクリアするべきハードルは三つ。第一のハードルは、財政の均衡です。第二のハードルは、再生可能エネルギーを国産化し、自給率を高めていくこと。そして第三のハードルは地方分権です。「閉じた経済」のなかで、できるだけ地域に密着した教育機関や企業、金融機関を充実させていくこと。(p.237~40)
 そう、映画に登場する人びとは、この第二・第三のハードルをクリアしようとしているのですね。日本では150年続いた、西欧では800年続いた経済成長至上主義(教?)が終わった後の暮らしを構想し実践する。これを革命と言わずして、何と呼ぶべきでしょう。しかも暴力や激情にとらわれずに、みんなで仲良く助け合いながら進める『おだやかな革命』。小さいけれども、大きい映画です。
by sabasaba13 | 2018-03-13 06:27 | 映画 | Comments(0)
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