『花咲くころ』

『花咲くころ』_c0051620_19465643.jpg 『おだやかな革命』を観た後、東中野駅からふたたび都営地下鉄12号線に乗って新宿へ、都営地下鉄新宿線に乗り換えて神保町へ。岩波ホールで『花咲くころ』を観ようと思いますが、上映まで小一時間あるので付近で昼食をとることにしました。「さぼうる」「さぼうる2」「キッチン南海」はいずれも長蛇の列ができているのでパス、「揚子江飯店」か「ろしあ亭」で食べようかなと思っていたら、幸いなるかな「スヰートポーヅ」の席が空いていました。やったあ。ひさしぶりに至高の餃子を堪能いたしました。
 それでは『花咲くころ』を観に岩波ホールに行きましょう。まずは公式サイトから引用します。
 1992年春、独立後に起こった内戦のきな臭さが残るジョージア(グルジア)の首都トビリシ。父親が不在のエカは母親と姉の干渉に反発を感じている。親友のナティアの家庭はアル中の父親のためにすさんでいた。生活物資は不足しがちで配給には行列ができているが、ふたりにとっては楽しいおしゃべりの時間だった。ナティアはふたりの少年から好意を寄せられている。ある日、ナティアはそのひとりラドから弾丸が入った銃を贈られた…
 監督はジョージア出身のナナ・エクフティミシュヴィリとドイツ出身のジモン・グロスで、エクフティミシュヴィリ監督の少女時代の思い出をもとにつくられた映画です。
 1991年にソ連邦から独立後に次々と起きた内戦や紛争、社会と経済への大きな打撃、それらに翻弄される民衆の様子が、スクリーンを通してリアルに伝わってきます。直接の戦闘シーンはないのですが、内戦が社会にもたらす傷、人々にもたらす困苦がよくわかりました。失業、食料不足、アルコール中毒、暴力など、戦争が招来する不毛さには慄然とします。それだけに、そうした困難な状況の中で、凛として生きる主人公エカの姿が印象的でした。たとえば、ジョージアでは略奪婚という慣習が一部に残っているのですね。衆人の眼前で親友のナティアが車で連れ去られますが、見て見ぬふりをする大人たちをエカは激しく詰ります。また彼女の結婚披露宴に招かれて見事な民族舞踊を踊り、まるで無言の抗議をしているかのようなエカの姿には魅かれました。エティアから「これを使っていじめっ子を脅しなさい」と銃を渡されながらも、そのいじめっ子が大人に暴力をふるわれていると、その銃を使って彼を助けるエカ。その瑞々しい正義感に心打たれます。エカ役を演じたリカ・バブルアニは素人から抜擢されたそうですが、素晴らしい演技ですね。
 もっとも印象に残ったのは、降りしきる驟雨のなか、エカとエティアが溌剌と駆けぬけるシーンです。"希望"が少女の形姿となって、驟雨という困難な状況にもかかわらず、未来へ向かって軽やかに疾駆しているような気がしてきました。パンドラの箱を開けた私たちに残されたただ一つの希望、それは若者。
by sabasaba13 | 2018-03-14 06:26 | 映画 | Comments(0)
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