『カメラを止めるな!』

『カメラを止めるな!』_c0051620_21273346.jpg 知り合いの映画ファンが口を揃えて、『カメラを止めるな!』を絶賛します。しかし好事魔多し、劇場で見る機会を失してしまいました。無念。しかしDVDが発売されていることを知り、さっそく購入。自宅のテレビで、山ノ神と二人でさきほど鑑賞しました。

 面白かった… まだ余韻に浸っております。ほんとうに面白かった…

 とりあえず公式サイトからあらすじを転記します。
 とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。本物を求める監督は中々OKを出さずテイクは42テイクに達する。そんな中、撮影隊に本物のゾンビが襲いかかる! 大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。
 “37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮ったヤツらの話。
 映画全編をワンシーンで繋ぐ試みは、ヒッチコック監督が『ロープ』で行いましたが、アイデアの秀逸さで上田慎一郎監督に軍配を上げましょう。お見事でした。
 あまり饒舌に称賛するとネタがバレてしまうので、気をつけて慎ましやかに三点だけ語りたいと思います。

 まず主人公の映画監督と娘の描き方が秀逸でした。監督は気が優しくて腰が低いのはいいのですが、周囲に気を使い妥協してしまいます。それに対して映画監督修行中の娘は、己の求める映画を撮るために、周囲との軋轢も意に介しません。当然衝突する二人ですが、やがて娘の姿勢に感化されて、父も少しでも良い映画を撮ろうと努力するようになります。そう、おやじのビルトゥングス・ロマンですね。ちょっとジーンとしました。

 次に、こんなに意表をついた切り口とひねりの利いたアイデアで、しかもかなりの(たぶん)低予算で、これほど面白い映画が作れるとは! 有名俳優をキャスティングしたり、コンピュータを利用したりして、観客を動員しようとする映画が巷にあふれるなか、爽快感さえ覚えます。映画がもつ無限の可能性に、あらためて眼を開かれた思いです。

 そして最後に…本作を見て、映画をつくりたく、あるいは映画製作に関わりたくなりました。監督、脚本、演出、撮影、大道具小道具、衣装、俳優、それぞれが役割を果たし、時には一人で何役もこなし、時には議論をし時には喧嘩をし、さまざまなトラブルやアクシデントを乗り切り、みんなで一致協力してより良い映画へと鍛え上げていく。利潤のために人間が部品として扱われるこのご時世ですが、それぞれが細胞として映画という生命を生かしていく彼ら/彼女らの姿に羨望する覚えました。ある意味、本作は映画と映画人へのオマージュかもしれません。

 奥歯にもののはさまった言い方しかできないのをもどかしく思います。申し訳ない。でも一見の価値がある映画です。心からお薦めします。知人にむりやり見せて、前半部で「つまらん」と言われたら、ニヤリと笑って「お楽しみはこれからだ」と呟くのが無情の愉しみです。

 余談です。映画つくりの快楽を描いた漫画、細野不二彦氏の『あどりぶシネ倶楽部』(小学館)も佳作です。こちらもお薦め。
by sabasaba13 | 2019-05-28 06:23 | 映画 | Comments(0)
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