安倍晋三上等兵内閣が、いまだに改憲を獅子吼しておられます。安保法制によって、日本を戦争ができる国にしたのに、憲法を変えてさらに何を望むのでしょう。いやいや、まだまだ変えたいことが仰山ありそうです。自民党の改憲案については、内田樹氏が『街場の憂国論』(晶文社)の中で、鋭く分析されているのでよろしければご一読ください。要するに「強きを助け弱きを挫く」国を目指しているようです。これだけ多くの方々が、この内閣を支持するか、無関心か、無知でいる以上、実現するかもしれませんね。やれやれ… sigh…そうした中、日本国憲法を真っ向から取り上げた映画が上映されていることを知りました。井上淳一監督による『誰がために憲法はある』という映画です。これは見にいかなくては、山ノ神を誘って、ポレポレ東中野に行ってきました。余談ですが、この映画館は、地下に降りる階段の壁に映画のチラシがたくさん置いてあり、面白そうな映画の情報が得られるのも楽しみの一つです。今回いただいたチラシは、朝鮮学校を取り上げた『アイたちの学校』、東京裁判をテーマとした小林正樹監督によるドキュメンタリー映画『東京裁判』、巨匠フレテリック・ワイズマンによる『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』です。なおこの映画のチラシに「映画には、リチャード・ドーキンス博士、エルヴィス・コステロやパティ・スミスなど著名人も多数登場するが…」という一文がありましたが、リチャード・ドーキンス、どこかで聞いたことがあるなあ。…(沈思黙考)…はた(膝を打った音)、今回、地下鉄の友として持参した『サイコパスの真実』(原田隆之 ちくま新書1324)の中に、次の文相がありました。 イギリスの進化動物学者リチャード・ドーキンスは、有名な『利己的な遺伝子』のなかで、進化のプロセスは、自己複製を最大の目的とする遺伝子が、その複製と存続に最も有利で利己的な方略を取ってきたものだと主張する。より正しくは、結果としてその遺伝子が存続しているということは、その方略が存続に適していたからだと言うべきだろう。(p.232)だから読書はやめられない。知のネットワークがつながる快感を与えてくれます。それはさておき、館内はほぼ満席、しかしいつものように若い方の姿はあまり見られません。 まずは公式サイトから、紹介文を引用しましょう。 井上ひさし、永六輔、立川談志も絶賛した、日本国憲法を擬人化した一人語り「憲法くん」を名優・渡辺美佐子が魂を込めて演じる!映画の冒頭は、女優・渡辺美佐子が「憲法くん」を演じる一人芝居で始まります。「70年間、わりとヒマでした」という一言は、バールのようなもので後頭部を殴られたような衝撃でした。護憲の立場からそれなりに尽力してきたつもりでしたが、その理念を実現するためにあなたは何をしましたか、と憲法くんに問責された思いです。 そして日本国憲法前文の朗読が続きます。齢87歳の彼女は、これを暗記したそうです。さまざまな思いを込めながら、凛として語られるその言葉の力強く美しいこと。ちょっと胸が熱くなりました。誠実に真摯に論理的に語られる言葉の力というものに、あらためて感じ入りました。それに比べて、事実を誤魔化すため、責任を逃れるため、あるいは自分を良く見せるために安倍上等兵が紡ぎ出す言葉の、何と浮薄で浅薄で軽薄なことよ。『「安倍晋三」大研究』(望月衣塑子 KKベストセラーズ)に下記の一文がありましたので紹介します。 【浜田(※衆議院予算委員会)委員長】 総理、済みません、簡潔に願います。言葉の持つ力への敬意を一片も持ち得ないこの御仁が憲法を変えようとしているのかと想像するだけで、肌に粟が生じます。 そして彼女が中心メンバーとなり、ベテラン女優たちと33年にもわたり続けてきた原爆朗読劇の様子が紹介されます。しかしその朗読劇も、2019年で幕を閉じることになりました。「言いたいことを言うと“左”と言われる」「もっと政治に関心を持って欲しい」「学校に招かれなくなった」といった女優たちの発言に、昨今の社会状況に対する苦渋の思いが滲みます。 彼女がこの朗読劇を始めるきっかけとなったエピソードも紹介されます。小学生のころ、ほのかな恋心を抱いてた少年が、疎開先の広島で被曝して亡くなったのですね。彼と出会った思い出の地を歩き、そして広島平和記念公園を訪れて慰霊碑に刻まれた彼の名を指でなぞる姿が写されます。 最後にふたたび日本国憲法前文を、渡辺美佐子が力強く朗読して、映画は幕を閉じます。 プログラムに井上淳一監督のステイトメントが掲載されていたので紹介します。 憲法くんは言う。「わたしと言うのは、戦争が終わったあと、こんなに恐ろしくて悲しいことは、二度とあってはならない、という思いから生まれた、理想だったのではありませんか」と。その理想がするりと掌からすべり落ちてしまいそうないま、表現にかかわる者の端くれとして、何もしなくてもいいのか。そういうやむにやまれぬ思いから、この映画を作った。元号が変わり、現行憲法最後の憲法記念日になるかもしれない日に、憲法に関する映画が一本も上映されていない国で、僕は映画に関わり続けることはできない。嬉しいことに、終了後、井上監督が壇上に現われてお話をしてくれました。チェ・ゲバラをプリントしたTシャツが印象的です。そういえば、来日した際に、ゲバラも広島平和記念公園を訪れたことを思い出しました。 話の中で『あたらしい憲法草案のはなし』(太郎次郎社エディタス)という本を紹介してくれました。1947年に文部省が中学生向けにつくった教科書『あたらしい憲法のはなし』と同じ体裁で、自民党による改憲草案の危険な内容を分かりやすく解説したいるそうです。はじめは、この本をもとに映画を作ろうとしたのですが、本気で支持しそうな人がいそうなので止めたそうです。また、沖縄と日本の加害行為を描けなかったことが失敗だったという言葉が心に残りました。 終了後、プログラムにサインをしてもらい、「次回作を楽しみにしています」と言うと、両手で私の両手をしっかりと握って微笑んでくれました。腰の低さと、物言いの柔らかさが印象的な、素敵な方です。 なお本作のプログラムは、たいへん充実した内容でした。中でも製作者にして弁護士の馬奈木厳太郎氏のコメントには、教えられることが多々ありました。「憲法についてQ&A」から二つほど引用します。 Q4 9条の平和主義はあまりに理想主義的なのではないでしょうか。もし、攻めてこられたら、そのときはどう対応するのですか?極めつけは、井上淳一監督および赤坂真理氏(作家)との鼎談の中での下記のコメントです。 今の話を聞いても、監督はすごく真面目な人だな、と思います。僕はもう少し醒めていて、変えられることはもちろん大変なことだとは思いますけど、憲法の条文がどうであるかより、国民の意識がどうであるかの方が重要だと思っています。だって、9条を持っている国でも戦争に参加するし、イラクに自衛隊出すわけでしょ。他方で、軍隊持っている国でもこれは間違った戦争だって考えれば、出さないわけじゃないですか。あるいは25条の生存権で、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとか言っておきながら、今のような状況があったり、男女平等だとか言っておきながら全然そうではなかったりするわけですよ。だから、いかにも改憲されるとこの世の終わりみたいな、そういったのはある種の憲法フェティシズムみたいな話だと思っていて、それもどうかなと思う。要するに負けたと思うでしょ、変えられてしまった時に。でも、やっぱりそうした話じゃないと思う。むしろ、条文がどうとか言うより、自分たちがどういう意識でどういう国でありたいかということの方がよっぽど重要で、それが“生ける法”というか“生ける憲法”になる。憲法とはそういうものだと思っているので、条文に寄りかかるのはあまり好きではないですね。(p.18~9)憲法の理念や理想を蹂躙するような政策が平然と行われ、その政権を国民が支持している状態は、事実上の改憲がなされているということですね。第25条との絡みで言えば、『週刊金曜日』(№1233 19.5.24)に次のような記事がありました。 「権利」としての法制化を日弁連が提起 生活保護から「生活保障」へ (片岡伸行)こういう状況を放置する、こういう状況をつくりだした政権を支持する、国民の意識って一体何なのですかね。あらためて、憲法を護る、憲法を生かす、そして憲法を蔑ろにする輩に鉄槌を下す、そういう意識を持ち続けていきたいと思います。馬奈木さん、いろいろとご教示をありがとうございました。勉強になりました。 帰りに「十番」でタンメンを食べようとしましたがお休みでした。「タラキッチン」でカレーを食べようと足を向けると「パーム・ツリー」というお店があったので新規開拓、ボンゴレをいただきましたが、特記事項はなしです。そして「ル・ジャルダン・ゴロワ」でタルトの詰め合わせを購入して帰宅しました。
by sabasaba13
| 2019-06-08 06:23
| 映画
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自己紹介
東京在住。旅行と本と音楽とテニスと古い学校と灯台と近代化遺産と棚田と鯖と猫と火の見櫓と巨木を愛す。俳号は邪想庵。
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