メスキータ展

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 「日本の素朴絵」展を三井記念美術館で見たときに、いろいろな展覧会のチラシを物色していると、あるチラシに載っていた版画に目が釘付けとなりました。黒と白の鮮烈な対比、切れ味鋭い描線、これはただものではない。作者は、サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ。メスキータ…寡聞にして初めて聞く名前です。東京ステーションギャラリーで彼の展覧会が開かれてるそうなので、これはぜひ見てみたいものです。まずは公式サイトより、彼についての詳細な紹介を転記します。
知られざる画家の全貌 ―メスキータ、4つの疑問

1.メスキータって誰?
 サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ(1868-1944)。この聞き慣れない名前の人物は、19世紀後半から20世紀前半を生きた、オランダのアーティストです。ポルトガル系ユダヤ人の家庭に生まれ、ハールレムやアムステルダムで、画家、版画家として、また、装飾美術の分野でデザイナーとしても活躍しました。その一方で、美術学校の教師として多くの学生を指導しています。中でもM.C.エッシャーは、メスキータから最も大きな影響を受けた画家で、特にその初期作品は、メスキータの作品と著しく類似しています。

2.メスキータは何を描いた?
 メスキータの仕事は、デザインとアートの双方にまたがっています。デザインの分野では、幾何学的な構成を生かし、雑誌の表紙や挿絵、染織デザインなどを手がけました。一方アートの分野では、まず版画家として、主に木版画で人物や動物、植物を題材に白黒のコントラストを強調した作品を数多く残しました。また、想像力のおもむくままに筆を走らせた、膨大な数のドローイングを制作しています。

3.メスキータのどこが見どころ?
 メスキータの最大の魅力は、木版画の力強い表現にあります。鋭い切れ味の線描による大胆な構成、明暗の強烈なコントラストを生かした装飾的な画面は、見る者に強い印象を与えます。アムステルダムの動物園や植物園に招来された、異国の動植物がメスキータの格好のモチーフでした。単純化された構図と明快な表現、装飾性と平面性が溶け合った画面には、しばしば日本の浮世絵版画の影響が指摘されます。一転して、ほとんど無意識の状態で浮かんでくる映像を作為なく描いたと言われるドローイングは、表現主義との親近性を感じさせるとともに、シュルレアリスムにおけるオートマティスム(自動筆記)の先駆けと言えるかもしれません。

4.なぜ今、メスキータ?
 ユダヤ人であったメスキータは、1944年に強制収容所に送られ、そこで家族もろとも殺されました。アトリエに残された作品は、エッシャーや友人たちが持ち帰って命懸けで保管し、戦後すぐに展覧会を開催します。メスキータの名前が忘却されずに残ったのは、エッシャーらの尽力によるところが少なくありません。近年のヨーロッパでは、カタログ・レゾネ(全作品目録)が発行され、相次いで展覧会が開かれるなど、メスキータの作品の包括的な紹介と評価の気運が高まっています。折しも昨2018年はメスキータの生誕150年にあたり、今年2019年は没後75年を迎えます。本展は、これを機に、知られざる画家メスキータの画業を、版画約180点、その他(油彩、水彩など)約60点、総数約240点の作品を5つの章分けで、本格的に紹介する日本での初回顧展です。
 当日、山ノ神を誘ったのですが、所用があるので行けないとのこと。一人で東京駅丸の内北口にある東京ステーションギャラリーに行ってきました。意外と入館者が多かったのにはすこし驚きましたが、ま、あれだけインパクトのあるチラシですから納得です。それではじっくりと拝見いたしましょう。実際の作品を見ると、圧倒的な存在感に目を奪われました。黒と白の強烈な対比、ソリッドな描線、考え抜かれた構図、粗密を細心かつ大胆に使い分けた彫りなど、木版画にこれほどの表現力があることが伝わる作品群です。動物や幻想を描いたものもいいのですが、私は「うつむく女」「トーガを着た男」「ヤープ・イェスルン・デ・メスキータの肖像」など人物を描いた作品に心惹かれました。なおヤープは彼の息子で、ポスターやチラシにも使われている作品です。紹介文にもあった通り、ユダヤ人であるメスキータは、1944年1月31日夜、妻、息子とともにナチスに拘束され、妻とメスキータは3月11日にアウシュヴィッツで、息子ヤープは20日後にテレージエンシュタットで殺されました。やりきれない最期です。

 というわけで、素晴らしいアーティストと出会えました。まだまだ私の知らぬ優れたアーティストはたくさんいらっしゃることでしょう。その出会いのためにも、健康で長生きしなくては。
by sabasaba13 | 2019-08-26 07:28 | 美術 | Comments(0)
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