福井・富山編(44):中野重治記念文庫(16.3)

 そしてすぐ近くにある坂井市立丸岡図書館に参りました。お目当ては、中野重治記念文庫です。まずはブリタニカ国際大百科事典から、彼についての紹介を転記します。
中野重治 (1902-1979)
 小説家、評論家、詩人。第四高等学校を経て 1927年東京大学独文科卒業。在学中から室生犀星の影響を受けて短歌や詩への関心を深め、また、林房雄らとの交友によりマルクス主義に近づいた。26年堀辰雄、窪川鶴次郎らと詩誌『驢馬』を創刊、『夜明け前のさよなら』(1926)、『歌』(26)などを発表。28年ナップに参加、検挙投獄、転向、執筆禁止などを経て、第2次世界大戦後は民主主義文学者の結集に努力、新日本文学会の発起人となった。47~50年日本共産党の参議院議員。64年党の方針と対立して除名された。『中野重治詩集』(35)、小説『歌のわかれ』(39)、『むらぎも』(54)、『甲乙丙丁』(65~69)、評論『斎藤茂吉ノオト』(40~41) がある。
 実はお恥ずかしい話、彼の作品は「雨の降る品川駅」という詩しか読んだことがありません。読もう読もうと思いながら、ここまで齢を重ねてしまいました。これを機に、ぜひ読んでみようと思います。

 丸岡図書館は大きな瓦屋根と白壁が印象的な平屋建て。中に入ると、図書館特有の凛としながらもどこか優しい雰囲気が漂います。図書館へのオマージュは『ニューヨーク公共図書館』の映画評で記したので、よろしければご笑覧ください。司書の方に、記念文庫を見学したい旨を申し出ると、鍵を開けて中に入れてくれました。この記念文庫には、福井県坂井郡高椋村(現在の坂井市丸岡町)一本田に生まれた中野重治の蔵書約1万3千冊が収蔵され、高田博厚作の中野重治胸像や原稿、愛用品などの遺品が展示されています。
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 万年筆、蕎麦猪口、矢立、室生犀星から贈られた木彫、『梨の花』原稿(複製)などを興味深く拝見。晩年、彼が外出の際必ず携行した定期入には、「私(中野重治)は耳、心臓に欠陥あり 万一のときは榊原記念病院へ運ばれたし 渋谷区代々木2‐5‐4 電 3751-3111 (代)」と記した紙片が入っていました。
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 また三冊の『中野重治詩集』がガラスケースの中に展示してありました。
ナップ出版部版 (1931年10月刊行) 警察に押収され発行を禁止された。これは伊藤信吉の手でただ一冊残されたもの。
ナウカ社版 (1935年12月刊行) 伏字あり。カット頁あり。
小山書店版 (1947年7月刊行) 伏字のない最初の詩集。
 当時、社会主義者の置かれていた状況を彷彿とさせます。なお「ナップ」とは、全日本無産者芸術連盟のエスペラント語Nippona Proleta Artista Federacio(NAPF)の頭文字を組み合わせた略称です。1928年、三・一五事件を契機に、それまで分裂していたプロレタリア芸術連盟(中野重治ら)と前衛芸術家連盟(蔵原惟人ら)とが合同して結成されました。5月に創刊された機関誌《戦旗》には、小林多喜二、徳永直、三好十郎らの新人が登場しました。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2019-10-29 06:19 | 中部 | Comments(0)
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