福井・富山編(49):中野重治記念文庫(16.3)

 余談です。先日、『孤独な帝国 日本の1920年代』(ポール・クローデル 草思社文庫)を読了しました。フランス駐日大使にして詩人、そして彫刻家カミーユ・クローデルの弟のポール・クローデルの手記ですが、その巻末の解説で、平川祐弘氏がこう述べられていました。後学のために引用します。
 永井荷風は、森鴎外はクローデルの如く行動人homme d'actionであり文人homme de lettresであると讃えたが、中野重治は典型的なひがみ左翼で、官吏であり文学者であるような人を頭ごなしに罵る悪癖があり、詩《ポール・クローデル》でこう諷刺した。

ポール・クローデルは詩人であつた
ポール・クローデルは大使であつた
そしてフランスはルールを占領した

フランスの百姓は貯金した
それを金持が取りあげた
そして金持はマリアを拝んだ
そしてポール・クローデルはマリアを拝んだ
駐日フランス大使になつた
そしてポール・クローデルは詩をかいた

ポール・クローデルは詩をかいた
ポール・クローデルはお濠をまはつた
ポール・クローデルは三味線をひいた
ポール・クローデルはカブキを踊つた
ポール・クローデルは外交した

おゝ そして
つひにある日
ポール・クローデルが
シャルル・ルイ・フイリツプを追悼した

おゝ 偉大なポール
大使で詩人であるクローデル
『われらの小さなフイリツプ』が
彼の貧しい墓の下でいふだらう
『ポール・クローデルは大使になつた』 (p.386~7)

by sabasaba13 | 2019-11-03 06:51 | 中部 | Comments(0)
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