「ブラザーズ・グリム」を見てきました。ま、簡単に言ってしまうと、いんちき悪魔祓いで稼いでいたペテン師グリム兄弟が、本物の魔術と立ち向かうはめとなった… もちろんフィクションですけれど。
4段階でいえば竹の中、時間はあっという間に過ぎました。グリム童話をちりばめ、魔女との対決シーンでの特殊撮影もそこそこ楽しめました。人を飲み込むようなドイツの森の表現は圧倒的。ちょうどナポレオン率いるフランス軍がドイツ(という国は未だなかったのですが)を占領している時代で、その対比が面白かったですね。フランス軍の司令官は森を焼き払おうとし、こう言います。「私は秩序を望む」 ドイツ=無秩序/自然、フランス=秩序/文明という描き方ですね。映画ではグリム兄弟は森を操る魔女を退治しますが、その後森=自然とどういう関係を築こうとしたのかな。映画はそこまでは語っていません。
ナポレオンに対する敗北という屈辱の中から、ドイツという国民国家を立ち上げようという動きが起こり、やがて三月革命が勃発します(1848)。そうした流れの中で、実際のグリム兄弟は偉大なドイツ文化のルーツとして民話を採集したのでしょう。なおそれを聞き取った相手はフランスから亡命してきた新教徒の子孫で、シャルル・ペローの童話をもとに語ったそうです。それはさておき、グリム兄弟を軸にこの時代を描く映画も誰かにつくってほしいな。
ところどころでクスッと笑えるシーンがあり、昔こんな笑い方をしたことがあるなあという既視感を覚えたのですが、プログラムを読んで合点。まことに迂闊、汗顔ものですが、監督テリー・ギリアムはかつて「モンティ・パイソン」を制作したチームの一人だったのですね。久しぶりに無性に見たくなってまいりました。
最後にロッシーニの「泥棒かささぎ」序曲がかかるのは何故なんだろう? 彼のことだから何か仕掛けがありそう。初演は1817年ミラノです、時代は合っていますね。