青森・秋田編(3):寺山修司記念館(05.9)

 さてやってきたタクシーに乗り込み、運転手さんとの会話がはずみだすと、どうやら原子力発電所に強い興味・関心をもっている方だということがわかりました。実は六ヶ所村に是非行きたかったが、小川原湖の北方に位置し遠距離なため断念したのだと話すと、彼は運転しながらしばし沈思黙考。そして料金が折り合えば、今日一日貸し切りにして、こちらの行きたい処を可能な限りすべて面倒見るというオファーがありました。寺山修司記念館、六ヶ所村原子力関連施設、尻屋岬灯台、そして飛行機の中でガイドブックを読んで見落としに気づいた大湊水源地公園を列挙すると、可能だという回答です。今度はこちらが沈思黙考。地元の方の話も聞きたいし、誠実そうな人だし、聞き取りやすい下北弁だし、よろしい、お願いしましょう。
 十分ほどで寺山修司記念館に到着。一棟には巨大なピエロの顔、もう一棟には彼の言葉や劇団「天井桟敷」関係の絵などが色紙状に貼り付けてあり、扉のデザインは横尾忠則。「便所より青空見えて啄木忌」「百年たったら帰っておいで 百年たてばその意味わかる」「偉大な思想などにはならなくともいいから、偉大な質問になりたい」 いきなり寺山ワールドです。ちなみに彼は弘前で生まれ、三沢で育った青森人。展示は、成績表(!)など彼の遺品や原稿、「天井桟敷」の舞台装置、机の引き出しを開けながら見るさまざまな資料など、大変充実したものです。自伝的映画「田園に死す」の中で主人公が
 その晩遅くなってからわが家に火事があり、近所の家まで焼けてしまった。警察では漏電だといったが嘘だった。ほんとはおれが机の引き出しにかくしておいた一匹の蛍が原因だったのだ。
と言っているそうですが、寺山が机と引き出しに対して持っていた愛着を意識した展示です。そうそう、寺山修司といっしょに撮れるはめこみもありました、これはファンにとってはたまらないだろうなあ。彼の演劇・映画は見たことがなく、読んだ著書も短歌集と数冊の随筆だけというとてもファンとは言えない私ですが、彼のことはずっと気になっていました。生涯青森弁を矯正(悪?)しようとしなかった、ローカリティへの愛着と、中央への反発、そして猥雑でエネルギッシュな想像力。これから長いつきあいになりそうな予感がします。よろしく。
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 彼の文学碑があるというので、外へ出てみました。鬱蒼とした雑木林の中を抜ける心地よい遊歩道には、彼の短歌を記した木柱が点在しています。小川原湖が眼前に姿を現し、湖面を右手に見ながらしばらく行くと美しい沼を見下ろすように文学碑がたっていました。
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし 身捨つるほどの祖国はありや
 ない。
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 ●寺山修司記念館 http://www.misawasi.com/~shuji-museum/

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2005-11-30 06:08 | 東北 | Comments(2)
Commented by はたぼー。@黒猫たち。 at 2006-01-17 00:13 x
TBありがとうございました。
ここは、本当に面白かった。
寺山の成績表。答案用紙。国語力がずば抜けているのがよくわかりました。まだまだカタカナも多く使われていた時代。ネット好きの友人と見学しながら、『(文体が)2ちゃんねるみたい』と話していました。

ところで、雑誌の『散歩の○人(本家)』。
好きな本でした。ワタシも東京で暮らしていたものでして。
ここのブログ、楽しそうなのでまた覗きにきます。
Commented by sabasaba13 at 2006-01-17 20:44
 こんばんは。「虚人 寺山修司伝」(田澤拓也 文春文庫)がなかなか面白かったですね。模倣をくりかえしながら、自らを演出し続けた男という視点です。「2ちゃんねる」については拝見したことがないのでよくわからないのですが、ここに憎悪の書き込みをする方々の年収は300万円未満という説があるそうですね。(「ご臨終メディア」森達也+森巣博 集英社新書)
 ご推察のとおり、実は「散歩の達人」という東京ぶらつき案内雑誌のファンだったことがあり、このブログのタイトルはそのパクリです。ここ数年で全く面白みを欠いてきたので、今は全く買っておりませんが。
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