「地雷リポート」

 「地雷リポート」(神保哲生 築地書館)読了。「亀も空を飛ぶ」という映画を見て、対人地雷のことがいたく気になりました。そういえば関連する本があったと思い、家に帰って本棚からほじくりだしたのがこれです。数年前に買って読むのを忘れていたのですが、あらためて読んで感服。素晴らしい内容でした。著者はビデオ・ジャーナリストで、地雷問題に関心をもち実際にアンゴラとカンボジアの地雷原に行ってその実情を取材してきた方です。地雷という兵器のおぞましさがよくわかりました。「地雷というのは、どんな種類であっても軍人のブーツと子供のサンダルを区別することはない」という言葉があるように、すべての人間の身体、精神、暮らしを破壊するための卑劣な兵器です。
 まず地雷とは、相手を選ばず、戦争が終わってからも生き続けるという二つの無差別性をもち、しかもシビリアン・コントロールが効かず(現地の兵士がいとも簡単に敷設できる)、非常に安価なので(poor man's guard)大量に使用されるという、非常に特殊な兵器であるということ。敵側の農業生産に打撃を与えるために農地に敷設し、占領地域に敵が入ってこないように広範囲に敷設した結果、民間人に大きな犠牲が出ていること。無差別に人間を傷つけるとともに除去を難しくするために、人間の叡智を結集していること。土色やプラスチック製のもの、子どもに拾わせるため蝶々の形をしたもの、傾けるだけで爆発するもの… この地雷を普通の地雷に少し混ぜておくだけで、除去作業が格段に困難となるそうです。その結果、地雷を機械的に除去する有効な手段はなく、未だ手作業で一つ一つ取り除くしかないとのことです。
 1996年の一年間に地球上から除去された地雷の数は、せいぜい10万個程度にとどまっている。地球上に既に埋められた地雷の数が一億個を越えていることを考えると、このスピードで地雷を除去していては、1000年たっても地球上から地雷を一掃することはできない。しかも10万個が除去される間に、…200万個から250万個もの地雷が新たに設置されているのだから、もう絶望的としか言いようがない。
 ちなみに一個3ドルの地雷を除去するために要する費用は、300~1000ドルだそうです。嗚呼… 生き残り勝利するために手段を選ばないのが軍隊の本質ですから、地雷がある限りそれは必ず使用されます。となると悲惨な地雷被害をなくすには製造・輸出・備蓄・使用を一切禁止し供給源を絶つしか方法はありません。地雷全面禁止ための条約を制定ために開かれたのがオタワ・プロセスです。しかしロシア・中国・インドといった主要地雷製造国、さらに38度線における必要性を理由にアメリカも署名していません。そしてアメリカに追従・従属する日本も。アジアで地雷全面禁止の動きが鈍いのは、日本に大きな責任があると著者は指摘しています。しかしカナダのラルフ・リーシン外務省安全保障局長はこう言っています。
 はじめから全ての国が署名しなくても、私は悲観していません。条約ができれば、署名しない国には、国際社会や周辺諸国から無言の圧力がかかります。地雷廃絶に向けた国際世論もさらに強固なものとなっていくでしょう。地雷を廃絶しないと損をする。そんな環境を作ることがオタワ・プロセスの大きな目標です。
 何という志の高さ! どこかの国の外務省に爪の垢をあげてください、リーシン氏。なお日本政府と防衛庁は地雷は必要であるという立場をとっており、現在自衛隊は100万個の地雷を所有しています。敵が攻めてきたら慌てて各地の海岸線に敷設するつもりなのでしょう。製造しているのは石川製作所です。
 なおこれは10年ほど前の状況です。現在では、日本政府は地雷全面禁止条約に署名・批准し、地雷廃棄作業もすすんでいるという未確認情報も得ています。はっきりした時点で追記します。

 というわけで、できるだけ多くの人に読んでほしい本です。日本に大使館すらないアンゴラに行くまでの過程は、(不謹慎ですが)下手な小説よりも面白いですよ。悲観もせず楽観もしない著者の言動には敬服します。
●地雷廃絶日本キャンペーン http://www.jca.apc.org/banmines/
●石川製作所 http://www.ishiss.co.jp/

 本日の一枚は旧ソ連製の地雷、PFM-1です。アフガニスタン、ソマリアなどでヘリコプターにより散布され、好奇心旺盛な子どもが大勢この地雷の犠牲になっているとのことです。
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 追記。Wikipediaによると、日本政府はオタワ条約を受諾して、2003年2月8日に保有していた対人地雷のうち、訓練用など一部を除いたすべての廃棄を完了したとのことです。
by sabasaba13 | 2005-12-07 06:05 | | Comments(4)
Commented by ウルムチ at 2006-04-11 10:26 x
日本には対人地雷は一つもありません
あるのは戦車地雷です
これは人が踏んでも爆発しませんし
大きいので見誤る可能性も少ないです

それと38度線の地雷は韓国軍朝鮮人民軍が現在も埋設し続けており
両国は自国で生産中で
アメリカは余り関係ありませんね

>そしてアメリカに追従・従属する日本も

アメリカ関係ないですな
(アメリカ製じゃないし)

対米追従やめて自主独立しますか?
具体的に何からはじめます?
地雷もやめて軍隊も辞めたらますますアメリカの言いなりになりますよ
Commented by ウルムチ at 2006-04-11 10:26 x
アメリカの言いなりになる理由として

独自の偵察衛星を持たない
諜報機関を持たない
核の傘に入っている
自力で守れるほど強い軍隊がない
シーレーンの防衛をアメリカ頼みだから
ですから

無抵抗の人間がアメリカで出て行けといっても米軍は聞きませんからね
いざとなれば銃で脅すことも出来ますし
現実にはガンジーの非暴力不服従は失敗しましたからね

韓国は自主独立を掲げ米軍の撤退した後を見込んで
今現在毎年2桁軍事費増強中です(今年2兆6千億円)
ロシアにヨーロッパにイスラエルと軍事協力も進んでいます

ぜひ韓国を見習いましょう

>敵が攻めてきたら慌てて各地の海岸線に敷設するつもりなのでしょう

日常的に海に機雷(地雷じゃないですよ)を巻いていたら
漁師が困るでしょう

と言うかどこの国でも同じなんですが






Commented by sabasaba13 at 2006-04-11 20:40
 こんばんは。長文のコメントをありがとうございました。内容のあるきちんとした応答をすべきなのでしょうが、多忙のためできません。ご寛恕ください。なお論点が多岐にわたっているので、整理します。

1.自衛隊の対人地雷保有について。Wikipediaによると、日本政府はオタワ条約を受諾して、2003年2月8日に保有していた対人地雷のうち、訓練用など一部を除いたすべての廃棄を完了したとのことでした。文中にも書いたように、追記いたします。一歩前進ですね。

2.38度線の対人地雷については、韓国軍にとっての必要性から、アメリカ政府がその存在を擁護しているという論旨です。アメリカ製地雷である/ない、という事実とは直接の関連はありません。なお日本政府がしばらくオタワ条約を受諾しなかった理由は、アメリカ政府への追従・従属からなのか、独自の判断によるものなのか、根拠を明示しませんでした。お詫びします。
Commented by sabasaba13 at 2006-04-11 20:40
3.アメリカの言いなりにならないためには、日本の軍事力増強が必要であるというのが、最も中心となる論旨だと受け取りました。これについては賛成しかねます。どの程度の軍事力をもてば自主自立の道を歩めるのか不明確ですし、凄まじい財政負担となるでしょうし、さらに東アジアの緊張が一気に高まるでしょう。米・中・日によるチキン・ゲームという、かなり深刻な事態にもなりかねません。そしてそれ以前に、その軍隊はアメリカ軍の支援部隊として頤使されるのが関の山だと思います。
 対米追従・従属でも、軍事力増強でもない、もっと違った選択肢を熟慮すべきだと思います。「具体的に述べよ」と言われても、そう簡単にはまとめられませんが… でもこれは大変重要な問題なので、自分なりに考えをまとめ、いつか発表できればと思います。
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