先日、慶應義塾大学三田キャンパスにある萬來舎に行ってきました。イサム・ノグチが彫刻と庭園を、谷口吉郎が建築を、そして二人が協力して室内デザインを受け持ってつくりあげた談話室です。彼の父、野口米次郎が慶應で教鞭をとっていた関係から応諾したようです。詳細についてはよく知らないのですが、新校舎建設に際して撤去か保存かもめた結果、移築・復元され、12月21日までの水曜日のみ一般公開されております。(無料・予約等必要なし・18:00まで) 大学のホームページによると、戦後、谷口吉郎設計による調和のとれた建物群が作られますが、1980年頃から学生数の増加に対応するために、校舎の高層化が進められます。「他校舎と比べ建物スケール的に取り残されてしまった」と大学は言っておりますが、ま、要するに新校舎建設のために邪魔になったのだと邪推します。正直に言って、高層ビルディングの林立する三田キャンパスに入ると、息が詰まるようです。
さて正門から階段を上がり左にある新校舎の外階段をのぼると、彫刻「無」と萬來舎が復元されていました。外観は何の変哲もない、白くやたらと窓が多いという印象です。

中に入ると、そこは光と緩やかな曲線に満ち溢れた暖かい空間でした。床は板張り、壁の色は白、中央には石臼のような暖炉と嘴のようなフード、壁一面に開かれた窓際に大小二組のテーブルと椅子のセット、逆サイドには緩やかな曲線を描く木製の間仕切りとその奥にはキャビネットと備え付けの小さな椅子とテーブル、暖炉の奥には少し高くなった段が設けられこれも優美なカーブを描いています。ここに腰掛けて団欒ができそうです。そして意図的に桟を多く用いた縦長の上下二段の窓から、光がふりそそぎ幾何学模様を床や壁に描いています。また吹き抜け部分に幾重にも薄い布が下げられ、そこに映る窓の影も幻想的に揺らめいています。なるほど、心が外部に開かれて会話が弾みそうな空間ですね。

気になったのは、階段を上がった所に何もないという点です。もしかするとオリジナルでは吹き抜けではなく二階部分があったのではないか。「物理的にできる限り復元」とHPにはありますが、詳細を知りたいですね。また家具類に「座るな/物を置くな」という注意書きがやたらと置いてあるのには閉口しました。イサム・ノグチの本意ではないと思います。 これ以後、どのような公開の仕方がされるのか、あるいはされないのか、不明です。談話のための空間と、鑑賞のための空間という二面性をうまく両立させた上での公開を是非期待します。慶應の識見が問われています。なお保存の経過等については、下記の慶応義塾大学のホームページをご覧ください。
●萬來舎およびイサム・ノグチ作品保存の試み
http://www.keio.ac.jp/news/030308.html
本日の一枚です。それにしてもこんな素晴らしい空間を一人で心ゆくまで楽しめたのは幸甚でした。大きな窓から陽がさす午後3時ごろが狙い目かな。