かどうかは分かりませんが、年末年始はいつものように箱根でのんびりと過ごしました。本を読んで、拙ブログの原稿を執筆して、温泉にはいって、ビールを呑んで、昼寝をして、雑煮と磯辺焼きを食べて、本を読んで…(以下繰り返し) そして恒例のウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートと箱根駅伝と「孤独のグルメ」を拝見。小原庄助さん的に循環する時間を満喫いたしました。 この際、購入してあったDVDを何本か観ておこうと、まず選んだのが『武器なき斗い』です。リーフレットから解説を転記します。 1929年、政府の治安維持法改悪にただ一人反対し、右翼の凶刃に倒れた労農党代議士、ヤマセンこと山本宣治の人間味あふれる生涯を描く。監督は『白い巨塔』『華麗なる一族』の山本薩夫。労働者達のカンパで作られた本作は、「60年安保」が高揚した1960年、浅沼稲次郎社会党委員長がテロに倒された直後に公開され話題となった。 大正14年、普通選挙法と抱き合わせで成立した治安維持法によって、社会運動家や自由主義者への弾圧は強まった。同志社大学で教団に立っていた山本は、先進的な性教育を教えていたが、それさえ弾圧の対象となり大学を追われてしまう。社会運動へと身を投じた山本は、普通選挙に立候補、苦しい選挙干渉と弾圧をしりぞけて代議士に当選した。治安維持法改悪をねらう政府に、山本は帝国議会での反対演説を心に決めて東京へ向かうが、その前日、右翼の凶刃に倒れる。そして戦後…。 常に貧しい民衆のために闘い、田中義一内閣による治安維持法改悪に反対し、そして暗殺された山本宣治、尊敬しています。これまでも、別所温泉「山本宣治記念碑」や宇治にある彼のお墓や山本宣治資料室を訪ねてきました。そして彼の生涯を描いた映画があることを知り、即購入、やっと観ることができました。 生物学学究の徒として静かで落ち着いた研究生活を望みながらも、社会の不平等や不公正を座視できず、政治的な活動に取り組まざるを得ない山本宣治。その葛藤と煩悶を上手く描いていました。最後の暗殺の場面も、息が詰まるような出来でした。ヤマセンを演じた下元勉の熱演もさることながら、宇野重吉・田中邦衛・小沢昭一といった芸達者なバイ・プレーヤーの演技が本作品に深みを与えています。 また小作争議とそれに対する官憲の弾圧、警察による選挙妨害、特高の拷問などの場面も、当時の日本社会の状況を彷彿とさせてくれます。知識としては知っていましたが、リアルに再現されるとインパクトも違います。映画の力って凄いですね。 そして映画を彩る名台詞の数々も心に残りました。「戦争と失業のない世の中にしたい」というヤマセンの言葉、今でも色褪せていません。いや、非正規雇用やフリーランスを見棄てて戦争への道をまっしぐらに進む岸田文雄内閣を政権の座に居座らせている今だからこそ、必要な言葉ですね。 マユを逆立てて怒る母親を、父親は「宣治はいま、大きな極道をしよるのや」と言って窘めます。そうか、"極道"とは、やりたいことをとことんやってみるということなのですね。 宣治が殺されたことを知りその場で泣き伏す嫁を前にして、昔気質の母親はキッと柳眉を逆立ててこう言います。「あては泣きまへんで。宣治は貧乏人の味方や、人さまにうらまれる筋合いはない。なんであの子が殺されねばならんかったのか、それがわかるまで、あては泣きまへんで」 知ろうとする執念、しかと受け取りました。 なお映画では、宣治暗殺の直前に、内務大臣(※望月圭介か)が警視総監(※宮田光雄か)を呼んで「お知恵を拝借したい」と言う場面があり、暗殺の背後に国家権力の存在があったことを匂わせています。またリーフレットには下記の一文がありました。 「武器なき斗い」-山宣と映画 浜田紀男(大阪山宣会事務局長) 研究者のみなさま、こうした歴史の暗部をぜひ白日の下に晒してください。そして映画・テレビ関係者のみなさま、"貧乏人の味方"となって権力に抗った歴史上の人物をぜひ主人公として取り上げてください。田中正造、幸徳秋水、管野すが、大杉栄、伊藤野枝、布施辰治、朴烈、金子文子など候補はたくさんいます。 NHKのみなさま、徳川家康を取り上げている場合じゃないでしょ。 追記です。千代田区は「まちの記憶保存プレート」として、区の歴史に残されたさまざまな足跡をプレートに置き換えて、後世へと伝えていくという試みをしています。その一つに山本宣治終焉の地である光榮館跡のプレートがあると聞いたので、去年、岩波ホールに別れを告げた後、行ってきました。合掌。 山本宣治終焉の地(光榮館跡) 神田神保町一丁目103番地先 区道植栽帯内 軍国主義の時代、国民弾圧の治安維持法に反対した唯一の代議士。1929年(昭和4年)3月5日夜、定宿の光榮館があったこの地で右翼暴漢の凶刃により、39歳の生涯を閉じる。
by sabasaba13
| 2023-01-14 07:11
| 映画
|
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自己紹介
東京在住。旅行と本と音楽とテニスと古い学校と灯台と近代化遺産と棚田と鯖と猫と火の見櫓と巨木を愛す。俳号は邪想庵。
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