青森・秋田編(22):小坂(05.9)

 45分ほどで小坂に到着、何はなくともまず資料館、というわけで郷土館を訪問しました。小坂鉱山は江戸時代後期に発見された銅山で、南部藩直営の後、明治以降は官営、そして藤田組に払い下げられます。しかし経営不振におちいり、創始者藤田伝三郎の甥久原房之介が黒鉱精錬技術を開発・導入してから日本最大の銅山へと変貌します。そして小坂に理想社会をつくろうと、電気・上水道・病院・劇場などを整備しました。その後意見の対立から藤田組を離れ、茨城の日立鉱山を開業、後に立憲政友会総裁に就任します。なお現在でも同和鉱業によって新鉱床の採掘が行われているとのことです。地図をもらい、散策を開始、まずは貨物列車のみ一日二便運行されている小坂鉄道の駅舎を見学。
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 そして1910(明治43)年に鉱山従業員の厚生施設としてつくられた劇場「康楽館」を見物しました。外観は下見板張りで洋風意匠をこらした堂々としたもの、内部は江戸期の芝居小屋と同じです。今でも現役で芝居が上演されているのが素晴らしいですね。楽屋には出演者の落書きが多数あり、花道のすっぽんや回り舞台は人力で動かしているそうです。感激したのは、不穏当な表現を監視するために警察官が詰めていた臨監席を当時のまま残していること。当時の社会状況を物語る第一級の資料です、関係者の識見を感じます。金毘羅神宮前の金丸座や内子座にはなかったような気がするなあ。それにしても芝居小屋から生まれた慣用表現の多いこと。楽屋落ち、大向こうを唸らせる、つんぼ桟敷、奈落… 江戸文化におけて芝居が占める位置はほんとうに大きかったのですね。
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 そしてすぐ隣にある小坂鉱山事務所へ。1905(明治38)年につくられた、ルネサンス様式とイスラム風バルコニーをもつ巨大な事務所です。その窓の数には圧倒されますね、ここに電燈が灯ると近在から見物人が押しかけたとのことです。その様子を模した老夫婦の銅像が建っているのもユーモラスです。事務所というだけあって、内部の意匠はそれほど凝ったものではありませんが、螺旋階段やバルコニーの洒落たデザインが光ります。なお資料館も併設されており、小坂銅山の歴史を知ることができます。
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 ここの食堂で稲庭うどんを食して、すぐ前にある愛らしい平屋の洋館「天使館」(鉱山従業員子弟の幼児教育機関)を拝見、こちらも現役で頑張っている映画館「花園館」、消防団の洋風倉庫、煉瓦造りの小坂精錬電錬工場と同和鉱業工場の外観を見物しました。なかなか見応えのある物件が目白押しなのですが、惜しむらくは街並み自体に特色がないこと。往時の雰囲気を残す民家や飲み屋や○○○を保存・復元して、今に生きる鉱山町とすれば観光客はともかく、私のような物好きはリピーターになると思いますが、いかが。
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 本日の二枚は、康楽館と小坂鉱山事務所です。
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by sabasaba13 | 2006-01-03 08:06 | 東北 | Comments(4)
Commented by K国 at 2006-01-03 10:03 x
あけましておめでとうございます

それにしても鉱山関係の建物は素晴らしいですね
別府も鉱山成金が贅を尽くして豪華な建物があったのですが
多くが壊されてしまい、二度と作れない建物の損失
行政の金の使い道の勘違いにガッカリしてます
三階建ての洋館に芝居小屋そそられます
Commented by sabasaba13 at 2006-01-03 13:49
 あけましておめでとうございます。もしや麻生一族の邸宅でしょうか、ほんとうに惜しいことですね。近代化遺産への関心も高まっているだけに、別府市にはもっと先見の明をもってほしかったですね。このままでは由布院と黒川温泉におされて寂びれてしまいます。
Commented by kurashiki-keiko at 2006-01-04 03:27
金比羅の金丸座は以前みたことがありまして、内部のスッポンやら奈落やら回り舞台やらを人力で動かす仕掛けなどもありましたが、官憲が検査する席というのは確かに無かったと思います。
それにしてもこういう建物を残して実際に使用していることなどはたいした努力だと思います。それが引いては現代の観光資源とも町おこしの材料ともなるということに早くから気づいておれば、このほかのうずもれた町にも沢山の資源があったでしょうに。
Commented by sabasaba13 at 2006-01-04 12:20
 あけましておめでとうございます。まったくもって同感です。それに加えて歴史の証言者としても是非保存してほしいものです。「愛国心」を声高に叫ぶ政治家諸氏は何とも思わないのでしょうか。ま、古い物を破壊し、新しい建物を作って利潤を稼ぐ側にいるのだから無理ないかと邪推します。
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