ランキン・タクシー頌

ランキン・タクシー頌_c0051620_12055453.jpg 『魂が目覚める中学経済の授業 誰ひとり見捨てない未来のために』(藤原孝弘 現代書館)という、ちょっと後ずさりするようなタイトルの本(でもたいへん充実した内容でした)を読んでいたら、下記の一文がありました。

 日本のレゲエ・ミュージシャンにランキン・タクシーと言う方がいらっしゃいます。本名白濱隆。
 「日本レゲエ界の草分け」と言われた彼は福島第一原発事故よりはるか以前の1989年、放射能の脅威を独特の皮肉っぽいユーモアで包み、「誰にも見えない、匂いもない」という作品を発表しました。(p.176~7)

 へー、寡聞にしてはじめて知りました。反原発ソングとしては故忌野清志郎氏の「サマータイム・ブルース」が記憶に残りますが、この曲がリリースされたのが1988年。インターネットで調べてみると、その翌年の1989年にリリースされたアルバム『火事だぁ』に収録されているそうですが、これはぜひ聴いてみたい。ただインディーズのアルバムなので入手できるのか不安でしたが、アマゾンで購入することができました。歌詞を紹介します。

「誰にも見えない、匂いもない」 ランキン・タクシー
 大変だ大変だ大変だ大変だ ニュークリア
 大変だ大変だ大変 事故ったら
 大変だ大変だ大変だ大変だ ニュークリア
 大変だ大変だ大変 このままじゃぁ
 放射能強い 放射能エライ 誰も差別しない 誰にも負けない
 放射能強い 放射能エライ 誰も差別しない 誰にも負けない
 ひとたび事故れば大パニック 小さなミスでみなオダブツ
 チェルノブイリはまだ警戒地区 喉元過ぎれば明日はスリーマイル
 潜水艦沈めば海はどうなる どこに捨てようんじゃ核廃棄物
 もう食べられなくなる農作物 おちおち出来ない日光浴
 放射能強い 放射能エライ 誰も差別しない 誰にも負けない
 放射能強い 放射能エライ 誰も差別しない 誰にも負けない
 天皇陛下 ミックジャガー マイクタイソン ベンジョンソン
 広瀬隆 ランキンタクシー 総理大臣 阪神巨人 
 推進派 反対派 東京電力 関西電力 
 男女子供大人朝日文春コメディーゴールデン白人黒人声優男優ホンダヤマハイラクイラン
 放射能強い 放射能エライ 誰も差別しない 誰にも負けない
 放射能すごい 放射能ずるい 誰にも見えない 匂いもない
 一次冷却水漏れても安全な原発
 24時間世界平和を守る原爆
 惨事が起きるまで懲りない性格
 用心してても起きる間抜けな単純ミス
 上手なセンでメディアの威力
 あまい雰囲気狙いはサブリミナル
 金積んで新聞一面広告
 信じているうちに風が吹いてくる
 放射能強い 放射能エライ 誰も差別しない 誰にも負けない
 放射能すごい 放射能ずるい 誰にも見えない 匂いもない
 原水禁 原水協 社会党 共産党 民社党 公明党 自民党 リクルート
 東芝 三菱 ドラエモン ドザエモン
 右翼左翼ゴジラモスラ警官痴漢社長先生聖子明菜アミューズジャニーズ光GENJI北京原人
 放射能強い 放射能エライ 誰も差別しない 誰にも負けない
 放射能強い 放射能エライ 誰も差別しない 誰にも負けない
 放射能くらって死んじゃうなんていやいやよー
 いつの間にか漏れてたなんていやいやよー
 生まれてきた子供に恨まれるなんていやいやよー
 豊かで不健康な暮しなんていやいやよー
 放射能で甘い夢見れるか
 放射能でエイズが治せるか
 放射能でセックス強くなるか
 放射能で美味しい幻覚見れるか
 放射能強い 放射能エライ 誰も差別しない 誰にも負けない
 放射能強い 放射能エライ 誰も差別しない 誰にも負けない
 放射能強い 放射能エライ 放射能スゴイ 放射能キレイ
 放射能ヒドイ 放射能ムゴイ 放射能イタイ 放射能ズルイ
 誰にも見えない 匂いもない 
 放射能スゴイ 放射能ムゴイ 放射能イタイイタイイタイイタイズルイズルイムゴイヒドイ…

 レゲエの軽快なリズムに乗って、原発を批判し皮肉りからかう痛烈なメッセージがくりひろげられます。「24時間世界平和を守る原爆」という痛烈な皮肉。「惨事(三時)・用心(四時)」、「自民党・リクルート」、「光GENJI・北京原人」、「広瀬隆・ランキンタクシーといった言葉遊びも楽しいですね。軽妙だけれど芯のある歌声、多彩な合いの手と早口言葉も魅力的。何よりも原発事故の二十数年前に、原発の悪影響と事故に警告を発した炯眼に頭を垂れましょう。ブラーボ!
ただ「惨事が起きるまで懲りない性格」という論評は、読み違えましたね。自民党を筆頭とする原子力マフィアの皆々様は、惨事が起きてもまったく懲りていませんから。

 こうしたメッセージ・ソングをもっともっと聴きたいものです。世の中の不正義や非条理や不合理を暴き、世に知らしめる力が音楽にはあるし、知らしめなければいけないと確信しています。不可視のままにしておいたら、なかったことにされてしまいますから。故忌野清志郎氏の言です。

 僕はね、ロックはメッセージだと思うよ。ロックでメッセージを伝えるのはダサイなんて言ってる奴は、ロックをわかっていないと思うな。

 今の世の中、つっこみどころ満載の不正義や非条理や不合理が、腐るほど山積しています。ガザに対するイスラエルの無差別爆撃、ウクライナ戦争、気候危機、岸田政権による軍事費大増額と大増税、原発の再稼働と新設および汚染水の海洋放出、旧統一教会問題、マイナンバーカード、インボイス制度、さまざまな差別とヘイト・スピーチやヘイト・クライム、とめどなく広がる格差… こうした問題を白日のもとに晒し、人々を変革へと誘う力を音楽は持っています。
 ウディ・ガスリーは、彼のギターにこう記していたそうです。

 この機械はファシストを死なせる。

 また『東京新聞』(23.10.24)によると、1973年にアウグスト・ピノチェトのクーデターによって殺された音楽家・ビクトル・ハラはこう語っていたそうです。

 「新しい歌(ヌエバ・カンシオン)」では、真の革命家はギターを構えなくてはいけない。ギターを武器にして銃のように撃てるように。

 なお、このアルバムに収められている「タクシーわたくし」と「ジャマイカ事情」も佳曲です。前者は軽妙洒脱な自己紹介の曲。後者はレゲエの故郷・ジャマイカを愉快に紹介する曲ですが、最後のところでベース・ラインが「オオカミ少年ケン」のテーマ"ボバンババンボン、ブンボバン"に変わるのには笑ってしまいました。
 また「ユー・チューブ」でこの曲を視聴できます。一聴の価値はありますよ。

by sabasaba13 | 2024-02-07 06:18 | 音楽 | Comments(0)
<< 雪景色編(1):前口上(18.2) ブレイディみかこ氏インタビュー >>