濱田芳通&アントネッロ

 「ヨハネ受難曲」を聴いたときに、コンサートに関するチラシを何枚かいただきました。その中に、東京カテドラル聖マリア大聖堂で行なわれる中世スペインの宗教音楽演奏会のお知らせがありました。丹下健三設計のあの教会で開かれる演奏会、どんな響きになるのだろう。心惹かれます。山ノ神を誘って行ってみることにしました。
 大聖堂のすぐ近くには椿山荘があります。せっかくなのでそちらで夕食をとることにしました。ただ調べてみると、練馬駅前から椿山荘に直接行けるバスの本数がきわめて少なく、選択できるバスの到着は開演の一時間前です。これではディナーをゆっくりと楽しむことはできません。ホームページを見ると、カジュアルなレストラン「ザ・ビストロ」がありました。ここに飛び込んで相談することにしましょう。
 演奏会当日、「ザ・ビストロ」に行き、もっとも早くできる料理を訊くと、パスタかクラブハウス・サンドイッチだそうです。しかし双方ともかなりの量とのこと。一品だけだと礼を失するし、あまり満腹だと眠くなるし、困ったなあ。するとウェイターの方が一緒に考えてくれて「ご提案があるのですが」と助け舟を出してくれました。クラブハウス・サンドイッチとグリーン・サラダを一品ずつ注文、それぞれを二皿に分けてくれるそうです。乗った! お値段は張りましたが、味も量も申し分ありませんでした。
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 そして横断歩道を渡って東京カテドラル聖マリア大聖堂へ。
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 中に入るのは初めてですが、斜めに屹立する打ちっ放しコンクリートの壁面が天に向かって収斂するような荘厳な空間です。(内部は写真撮影禁止) そして指揮者・アンサンブル・合唱団の登場。チラシとパンフレットから曲目の解説と奏者の紹介文を転記します。

濱田芳通&アントネッロ_c0051620_12051718.jpg 「モンセラートの朱い本(Llibre Vermell de Montserrat)」は、14世紀末にカタルーニャ地方のモンセラート修道院で編纂されました。この写本には"モンセラートの聖母(通称La Moreneta)"に捧げられた歌を含む10曲が収められています。素朴な踊り歌、カノン、アルス・ノヴァ風モテット等、様々なスタイルで構成されており、それらはいずれも力強く美しいメロディで、巡礼者が歌ったり踊ったりできるよう、修道士が様々な時代や地域から集めたと考えられています。"朱い本"の由来は後世に施された装丁(鮮やかな朱色のベルベットが使われている)によるものです。
 「聖母マリアの頌歌集(Cantigas de Santa Maria)」は13世紀、学問・芸術に秀で賢王(El Sabio)と称されたカスティーリャ国アルフォンソ10世によって編纂された壮大な写本です。聖母マリアに言及する427曲のうちの多くは、マリアの御加護によって起こった奇跡が綴られています。トルバドゥールの伝統にインスパイアされたこの曲集は、宗教的なテーマと世俗的なテーマが豊かに融合し、魅力的なメロディと活発な舞曲から深い内省的な曲まで、こちらもまた、幅広いスタイルを網羅しています。

濱田芳通
 我が国初の私立音楽大学、東洋音楽大学(現東京音楽大学)の創立者を曾祖父に持ち、音楽一家の四代目として東京に生まれる。リコーダーとコルネット(ツィンク)のヴィルトゥオーゾとして唯一無二の存在感を放つ。指揮者としての活躍も目覚ましく、オペラ創成期からバロックに至る初期のオペラ作品を精力的に上演している。

アントネッロ
 1994年の結成以来、アントネッロは〈作品が生まれた時代のスピリット〉を大切に、躍動感、生命力が備わった、音楽の持つ根源的な魅力を追及している。国内外のレーベルからCDをリリースし、古楽の解釈と演奏において第一線で活躍するグループとして、常にメディアから高い評価を得ている。クラシック音楽の既成概念を超えて純粋に『音楽性』を求めるその企画や作品は、クラシック音楽ファン以外からも注目と共感を集めている。2015年11月、東京カテドラル聖マリア大聖堂で演奏した「モンセラートの朱い本」は、NHK BSプレミアム「クラシック倶楽部」、NHK-FM「ベストオブクラシック」で度々放送され、古楽ファンのみならず、多くの視聴者から絶賛された。

合唱 ラ・ヴォーチェ・オルフィカ
 イタリア語で"オルフェオの声"を意味する「ラ・ヴォーチェ・オルフィカ」は、濱田芳通と彼の音楽に共鳴する人々により1986年に結成。以来、中世・ルネサンスからバロック時代までの音楽を楽譜から解き放ち、現代に真の姿で届けることを目指している。活動は主催演奏会を中心に、これまでTV出演、CDリリース、各音楽祭出演など。また、『音楽の友』誌では年間ベストコンサートに複数回選出。2015年のアントネッロ「モンセラートの朱い本」公演にも参加、NHK BSプレミアム「クラシック倶楽部」にて放送された。

合唱 イコラ・アンサンブル
 音楽家谷本喜基の呼びかけで2021年に結成された室内混声l合唱団。約20名のメンバーで音楽の本質を探るリハーサルを楽しんでいる。2023年11月にはG.ロッシーニ《小荘厳ミサ曲》をオリジナル編成に近い形で上演し、団員それぞれのポテンシャルを生かした意欲的な演奏は各方面で好評を博した。本年11月4日には、J:COM浦安音楽ホールにおいて第3回コンサートが予定されている。

 コンクリートなので硬く耳障りな残響かと思いきや、豊かで柔らかく響くのには驚きました。アンサンブルも合唱も少人数なのですが、マイクとアンプを使っているかのような迫力のある音量でした。
 耳慣れない曲ばかりですが、いたってシンプルなメロディと和音とリズムを心地良く楽しめました。マリアの恩寵に包まれながら、みんなで声を合わせて音楽を楽しむ巡礼たちの姿が目に浮かぶようです。またアンサンブルには打楽器も含まれており、踊りたくなるようなダンサブルな曲もいいですね。
 音楽を聴く喜びを堪能できたひと時でした。

by sabasaba13 | 2024-07-07 07:54 | 音楽 | Comments(0)
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